エロ率分析 (α)

〜分析結果サンプル〜


 そもそも、これは生きていない。完全な人類として不適である。故に失敗作だ。

 ――『最終ハイブリッド計画/No.01』報告書より抜粋




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「呼吸を止めるな」


 キャリコの腹を指で軽く押しながら、言う。

 内に入っているモノのために、わずかに腹には浮き出るものがあった。


「……そう。身体の中の力を、俺の指に集めるように、だ」


 他人の気を操ることは難しい。

 決して不可能ではないが、困難だ。

 その原因の一つが、基本的に目には見えない、身の内の力である、という点だ。

 外部に漏れだすか、極めて強力に練り上げた気ならば見えることもあるが、その程度だ。

 未熟、あるいはまったく訓練していない者の気を見ることは、極めて難しい。


「そうだ。……上手いぞ」


 だが、俺には可能である。

 俺は通常の意味での魔力を持たないが、その分、気に対して親和性が高い。

 無論、常時見ることができるわけではないが、眼球を作り替えて集中したならば、漏れだす気くらいは見て取れる。

 このように密着した状態ならば、方向性を整えるくらいは可能だ。


「ん……!」


 呼吸に伴い、筋肉が動くのが分かる。骨と肉が擦れる音を聞く。聴覚を用いて、その筋肉の動きを把握する。

 警察には、これを利用した指圧・尋問術の達人がいるそうだが、そのうち教えを請いに行きたいところだ。キャリコの脚のマッサージにも有効だろう。


「ゆっくりと、呼吸しろ。リズムはそのままだ」


 つまるところ、気とは生命力だ。

 気と呼びならわすのは東洋圏の言い方であるが、西洋においてもこの生命力を用いる体術は存在する。

 キャリコに今期待するのは、生命力本来の力――文字通り、生命力の賦活だ。

 ……視線を落とす。

 俺もかなり動揺していたというか、冷静さを失っていた。

 キャリコの身は細い――胸囲だけは大変に太いが、そんな女に、デフォルト設定の男根を押しこんでいるのだ。

 彼女のは大きく押し広げられている。口端を無理に広げられて唇が裂けた、というのは、妥当な例えだろうか。

 その裂けた個所を、生命力の集中によって治癒しよう、というわけだ。


「痛みはまだあるか」


 言いつつ、指先で彼女の身を走査し、気を操作する。


「だ、大丈夫、ですにゃあ……っ」


 キャリコの全身には汗が浮いている。

 生命力を活発化するのは多かれ少なかれ誰でもやっていることだが、こうして意識して回すことは初体験だろう。他人に引っ張られながら走るような感触を、キャリコは得ているはずだ。

 痛みは薄れているように見える。

 違和感はあるようだが、これは仕方のないところだろうか。

 ともあれ一度終わらせなければならない。

 視線を向け直すと、キャリコが、ん、と頷いた。

 胸前で組まれていた手を解く。乳肉にめり込んでいた腕を肩上に持っていき、握る。

 キャリコの手に体重がかからないように注意しながら、身を沈めて、頬に口づけた。


「――では、そろそろ動く」


 キャリコが俺の手を握ってくる。

 ゆっくりと、慎重に――それは変わらないが、先ほどまでよりは幾分か早く、腰を引く。

 亀頭、カリが愛液をかき出す。

 男根に感じる肉はとろみを増している。さすがは発情期――というところか。

 無理矢理に開いた奥であるが、いくらか治癒がなされている。

 侵入時には、男根を絞るように締め付けていたが、筋肉が疲労したためか、次第に緩んできていた。


「ん……❤」


 キャリコが俺の手を、強く握ってくる。

 抜けかけたところで、また挿入を行う。

 ぬ、と声が出る。

 摩擦と圧迫がある。ぬめりによってスムーズに出し入れも行えそうだった。


「ん……にゃっ❤」


 奥まで挿入すると、キャリコがおとがいを反らした。

 全身が敏感になっているようだった。気を集めたのもいけなかったのかもしれない――子宮周辺が活性化している状態ではあるからだ。


「あらん、さまっ……❤」

「っ、」


 甘えるような、鼻にかかったような声を聞いて、腹奥の本能がまた叫びだす。

 セックスになっている。


「アランさま、アランさまぁ、あっ、らんさまっ❤」


 繰り返し、繰り返し、キャリコは俺の名を呼ぶ。


「様は、いらん」


 呼吸と腰のリズムを一定に保ちながら、キャリコのを掘削する。

 その合間に行っては見たが、キャリコは首を左右に振った。

 白黒茶の髪を、汗で額に張りつけながら、キャリコは言う。


「ん、で、もっ……❤」


 ふと気づいたが、眉毛とまつ毛は白一色だった。三毛猫であっても斑は様々であるし、キャリコが猫であった頃も、目のまわりは白だっただろうか。

 陰毛はどうだったか。


「アラン、さまっ……❤ ごしゅじ、さま、ですから、にゃぁっ……❤」


 犬系のような忠誠心を、キャリコは向けてくる。

 気紛れ気儘な猫としては極めて珍しい、ような言葉だった。

 猫系が自由奔放というのは全くの俗説であるが、しかし事実として気紛れ、ぐうたら、よく眠る、などの類型はある。

 その巨乳と同じく個体差と言えばそうなのだろうが。


「にゃっ❤ お、っきく❤」

「ぬ。……すまん。むらっとした」


 にゃ、と、キャリコは笑みを浮かべた。

 脚が動かないのがもどかしげだ。


「うれし……❤」


 キャリコが片手を解いて、俺の頬に手をやってくる。

 撫でられて、頬が熱くなるのを自覚する。


「がまん、しにゃいでください、アランさま……❤」

「……しかし」

「きゃり子、も、おにゃかの、おくが、あつくてぇ……❤」


 キャリコの口からは、愛液がとめどなく溢れている。

 後で水分補給が必要かもしれない、と思いながらも――今度はきちんと自覚した。己の興奮と、それに伴う勃起の強化を。


「うっ❤ ひ❤」


 キャリコが、蕩けた笑みを泣き顔に変える。

 痛みの色は見えない。

 口から流れた血は、既に愛液で流れてしまっている。


「お願い、します……アランさ、ま❤ 発情期❤ 鎮めて❤ あらんさまのおちんちんで❤ しつけてぇえっ❤」


 頬にあった手が、首裏に回って、抱き寄せてくる――眼前には、折れた耳があった。

 そこに、呟く。


「……分かった」


 ……もう我慢がならない。

 いよいよもって理性がはじけ飛ぶ。

 何を言っているのだと、怒りすら感じる。全く不当な怒りだ。

 その怒りを腰に込める。


「ふっぎッ❤」


 キャリコが背を反らした。


「う、ひィっ❤」


 首裏の肌に爪が立つ。


「ひにゃっ❤」


 握られた手の甲にもだ。


「ありゃっ❤ さまっ❤」


 内は締め付けを取り戻している。


「す、き❤ あらん、さまっ❤」


 力いっぱい、抱きしめられている。


「あらんさま❤ あらんさまぁ❤ にゃぁっ、あ❤」


 声を聞きながら打ち込む。


「おくっ❤ ゆれ、るっ❤」


 熱い内。熱い愛液。そもそもの体温がやや高い。


「すきっ❤ すきですっ❤ ひゅきっ❤ ぃ❤」


 動悸は激しい。


「にゃに、かっ❤ く、きますにゃっ❤ にゃあっ❤」


 身体をうねらせている。


「キャリコ、」


 抑え込んで、名を呼ぶ。俺が名付けた名を。


「孕め……!」


 命令すると、キャリコは全身を小刻みに震わせた。


「ひ❤ はひ❤ あらんさま❤ つよ❤」


 いつの間にか、腰の動きは高速になっている。


「身籠れッ、分かったかッ……!」


 再度命令する。キャリコは涙をこぼしながら、笑みとも見える表情を浮かべ、喘ぎながらに了承する。


「わかっ、り❤ まひたっ❤ にゃっ❤ 産みまひゅ❤ あらんさま❤ 産ませてくだしゃいぃ❤」


 それが最後のタガだった――本能をそのまま放出するように、俺は射精した。


「にゃっ❤❤❤」


 一際強く――奥の奥まで挿入されたためか、キャリコは俺の下でのけ反った。


「にゃ❤ ァああああ❤ あっ、あぁああああ❤❤❤ あぁあああ――……っ❤❤❤」


 声はすぐに途切れた。

 人外量の精液を叩きこまれ、キャリコは身を激しく痙攣させる。

 砂漠の旅人に。乾いた旅人に、水を与えたような心地を、キャリコは味わっているはずだ。

 キャリコは呼吸ができていない。

 だけをうごめかしながら、全身を硬直させていた。

 口を大きく開いて、舌を突き出している。

 脈動と共に放出される精液に合せるように、キャリコは全身を跳ねさせている。

 それは、次第に弱々しくなっていく。俺の射精が弱まっていくためだ。

 そして、キャリコは文字通り息を吹き返した。


「ッ、……ァ! っか、は……❤」


 けほ、と、キャリコは空咳をして、激しく荒い呼吸を取り戻す。


「ま、だ、出てます、にゃあっ……❤」

「ああ、念を入れている」


 キャリコの子宮が、腹の上から見えている。

 きつく締まっている内が、呼吸の度にわずかに緩み、端から精液が漏れている。

 シーツの洗濯で済むだろうかと思いながら、頭を撫でる。


「ん……❤」


 キャリコが、震える手で俺の手を掴み、固定し、自ら頭をこすりつけてくる。

 頬擦りし、そして、口の中に。甘噛みされ、吸われる。


「ありゃん、ひゃま……❤」


 吸い付きながら、キャリコは俺を見上げてきた。

 視線には意志が乗っている。


「……収まらんか」

「ん、……しゅみみゃひぇん……」

「いや、いい。俺もまだ、念を入れる必要があると思っている」


 身を離し、身を起こす。

 真っ赤な唇から指を引き抜いて、一度頬を撫でて、そして片足を抱える。


「……んぇ、あぁっ❤」


 脚を回して、尻をこちらに向けさせる。

 流石は猫系と言うべきか、身が柔らかい。腰を180度回したというのに、顔がまだこちらを向いている。

 不安げな――そして、期待をした顔だ。


「こ、これ……アラン、さまぁ……❤」

「念を入れて、セックスではなく、交尾を行う」


 キャリコの二股の尻尾が、ぴん、と立った。

 キャリコは目じりを蕩けさせた。

 キャリコが熱い息を吐く。


「お、お願いします……こ、こうび❤ ニンゲンみたいじゃにゃい、乱暴にゃやつ❤ おしりつかんで❤ きゃり子、ダメにしてください❤」

「ああ」

「きゃり子に、アランさまのものだっておしえて❤ ささげさせてください❤ にゃっ❤」

「そのつもりだ」


 尻に乗るように、身を重ねる。

 頬に口づけ、こちらを見ようとするのに合わせて唇を合わせて、舌を吸い、そして離す。


「んんっ……❤」


 離れていくことで、キャリコが眉根を寄せる。


「キャリコ。貴様は、俺専用だ。……いいな?」

「っ……❤❤❤」


 表情で、了承だと分かった。

 故に、腰を動かす。


「ひにゃっ❤ はひっ❤」


 密着しているためにやや動きづらいが、その分あえぐキャリコの顔がよく見えた。

 頭を撫で、耳に言葉を流し込む。


「キャリコの乳房が好きだ」

「いぅっ❤ ふにっ❤」

「髪も触り心地がいい」

「ひにゃ❤ はぁあ❤」

「笑顔も好きだ」

「あっ、ひ❤ にゃぁあああああっ❤」

「暖かいな」

「あふっ、へひっ❤」

「俺を好いてくれて、ありがとう」

「しゅ、き❤ あら、さまっ❤」

「明日はどこに行く? 一緒に、出掛けよう」

「ぁああああっ❤ あっあっあっあっ❤ あァっ❤」


 頷いたのを視認し、身を動かす。

 肩口だ。

 白く細く華奢な肩口に、牙を立てる。


「ひぃっぐ❤ っぅううう❤ うぁああああああああっ❤ あ――っ❤❤❤」


 優しさを。

 配慮を忘れる。

 貪る。


「好ぎっ❤❤❤ ありがとっ❤ ごじゃいましゅっ❤ すきですにゃっ❤ あらんさまっ、あらんさまっ❤ あらんさまっ❤ いたくひてっ❤ いたいのっ❤」


 キャリコが喚く。

 腰は安定しない。

 土台となる脚が動かないためだ。

 噛みながら、胎を抑えて固定する。


「おぐっ❤ にんひんっ❤ うみゃっ❤ みゃっ❤ かっ、ァ❤ にぎっ❤ アラン゛っ、さまぁああ❤❤❤」


 亀頭は、奥を押し上げている。

 鈴口は、子宮口を押し上げている。

 叩く。

 殴りつける。

 ひたすら俺の性欲の解消を目指している。

 きちんと締め付けろと、牙で命令する。

 孕めと全身で命令する。

 女がひぃひぃと泣く。

 がにゃあぁと鳴いた。

 涙を流して赦しを乞うを完全に無視して押しつぶす。

 泥のように蕩けた穴に男根を突きこむ。

 逃れようとするを抱き潰す。

 体液の沼地じみた孔を掘削する。

 痙攣する女体を抑え込む。

 肉と肉がぶつかり合って飛沫を立てる。

 血の味を舌に得る。

 肌と肌がぶつかり合って音を立てる。

 牙を抜けば肌に歯型の穴が開いている。

 腰の動きが速くなる。

 穴を舌でほじくると、の鳴き声が高くなった。

 摩擦と圧迫が強くなる。

 それを貫く。

 揺れる乳房を片手で掴む。

 握って指を沈ませる。

 手形が付いてしまうだろう。

 それほどに強く握る。

 悶え方が変わる。

 意味のない叫びが、高い声が、抽送ごとに区切られる絶叫が出る。

 腕が、俺の頭に回った。

 拒否する動きではない。

 押さえつけるような動き。より牙を食いこませる動きだ。

 意味のないような叫びの中に、意味が混じる。

 好き、とか。

 俺の名であるとか。

 よく分からない。

 俺にそんな機能は実装されていない。

 牙を肌から離す。


「キャリコ」


 名を呼ぶ。

 俺にそんな機能は実装されていなかった。

 だが、よく分からないという、感情がある。

 それにラベルを付けるならば、これこそが。


「俺もッ、キャリコを、好いているッ」

「あっ、ひ? うにゃっ、ァ❤」

「結婚、しろッ」

「……っっっ❤❤❤」


 キャリコが、滂沱と言える涙をこぼした。

 どこにそんなに残っていたのかというくらいの活力を発揮しながら。


「きゃり、こ、も❤❤❤ そ、ですにゃっ❤ あらん、さまっ❤❤❤ がんばりますにゃっ❤ がんばりますっ❤ がんばりますっ❤」

「ああ、応援するッ……!」


 頭を抱え込む。口を離したことで、腰の自由度が上がっている。

 射精に向けて突っ走る。


射精、するぞッ……!」

「うっ、うっ、にゃっ❤❤❤」


 キャリコは覚悟するように息を止め、


「にっ、ァっ、ああああああああああああああああああっ❤❤❤ あぁっ――にゃあああああああああああぁああああ❤❤❤」


 キャリコが、最後とばかりに激しく絶叫した。

 壊れそうなほどに反る背筋を抑え込み、精液を注ぎ込んでいく。

 熱い内に負けないほどに熱い精液を叩きこんでいく。

 満杯で、しかし押しつぶされて精液を吐き出していた子宮精液を飲まされていく。

 胎を抑える手で、膨れ上がる子宮を感じる。

 卵子の逃げ場などあるはずがない。

 今この瞬間にでも、俺の精子卵子を捕らえ、そして着床させに行っているはずだ――否、もう既にか。これは二回目の射精だった。


「にゃ……あっ❤ はぁっ❤ ひにゃぁあ❤ あぁああ……❤」


 息も絶え絶えと言った塩梅のキャリコの背から、身を起こす。

 上気した肌が見えて、蒸発した汗がにおいとして鼻に届く。

 散々に打ち合わされた尻は朱く脹れている。

 細い身の腋からはみ出した巨乳も朱く手形が付いていた。

 噛んだ首筋からは血が二筋流れて、汗を吸った毛先を汚している。


「……孕んだか」

「は、……は、ぃ❤ ぜったい❤ これ……❤ ぜっ、たい❤ こども、できちゃった、にゃぁ❤ あらんさまの、こど、も❤❤❤」

「……そうか」


 力の抜けた身を持ち上げる――男根挿入したまま、胴を抱えて、膝の上に座らせる。

 両足を伸ばしてやり、身を支えてやる。

 身長差がある。膝の上に乗っているが、それでもなおキャリコの頭は俺の下にある。

 小さく細い身だった。

 巨乳だが。


「……すまない。噛みすぎた」


 傷跡を舐めると、嫌がるようにキャリコは身をよじり、そして甘い声を上げた。


「ひにゃ❤ あひっ❤ しみりゅ❤ あらんさまっ❤」

「すまない」


 舐めてやりながら、雄大な大きさの乳房を支えるようにやわく揉む。


「ここもだ。理性を失った。すまない」

「おっぱ❤ ぃ❤ ぞわぞわきちゃっ❤ あらんさま❤ も、もうこどもできましたっ❤ はっ、つ、じょうき❤ また❤ きちゃう❤」

「いくらでも、付き合おう。俺も、もっとキャリコを抱きたい」


 腰を軽くゆするだけで、キャリコは嬌声を上げる。

 首が反って、後頭部が俺の肩に乗った。


「……キャリコ」


 その首に手を沿わせる。


「俺は、努力する。キャリコの全てを背負う。安心しろ」


 そのまま頬に手をやって、こちらを向かせる。


「安心して、愛されろ。キャリコ」


 深く口付けし、そして腰を揺する。

 口の中に喘ぎが漏れてくる。

 まだ終わらない。

 この程度では済まされない。

 俺に男女の愛というものを教え込んだのだ。

 また、完全な人類とやらから遠ざかった。

 それを好ましく思う俺がいる。

 復讐しなければならない。

 報恩しなければならない。


「俺は、キャリコを愛している」


 返答は、口付けだった。

 抱き、そして愛する。