エロ率分析 (α)

〜分析結果サンプル〜



 ――ジェームズさんから一本の電話が入った。

 俺は、夜空を――そして、その中天に浮く巨大物を見上げながら、それを受けた。

 曰く。


「ヒンデンブルグ号が過去より浮上っすかー……はい。見えてます。かなり近いって言うか、ほぼ真下ですね……」

『君はなにか。アレか。そういう星の下に生まれているのか』

「うるせえです。……で、えーと、今日は勘弁していただけたらなーと。デート中なんですよ頑張れよ警察」


 ヒンデンブルグ号――過去に墜落したはずの硬式飛行船は緩やかにこちら側に回頭している。

 飛空船の下部の、……客室、ゴンドラと言えばいいのか。その裏に、人が立っているのが見えた。


『そうしたいのは山々なのだが――やつが、君を指定していてな。頼んだぞ』


 と、それを最後に電話が切れる。

 スマホにヒビを入れなかったのはほとんど奇跡だった。

 言葉と同時。ツェッペリンから声が響いてくる――




「ハローおはこんばんグぅテンタ~ぁアアアアアアアアアアアアアアク言い損ねた皆様にはぴはぴ★ぬーイヤァアアア!!! みんなのジェスター・クラウン、最近はクソピエロって呼ばれてて悲しいなうんこの気持ちになれよウンコ――!!! オカンの脳みそウンコは灰色でした! どんな気持ちだったんだろぅうううううねっっっ!! ところでトポロジー本日はーっ! ボクの誕生日だった気がするのでサープラーイズ!!! 香港のみんなー!!! 元気してた――!!!??? 俺は頭がオカシイだったから黄緑色のお部屋でグースカだったけどお兄ちゃんが私の耳元で囁くのだヴェンデッタ!!! あっそぼーうぜズィールバーァ棒――!!! 夜の果てまでダンス・ダンス・ダンスタンス革命だよ!!! エースを打ち倒す3を見せてやるよって自分姿的にはジョーカーだったな大富豪やったことある!? お兄ちゃんと二人でやったときは楽しもうね! おじさんはもう元気はつらつでついつい蘇生してしまいましたし組成もしました!!! 生身の両腕ないからね! 脚もない! 手足が必要だったから組織編成しました。病院の中からモールスで。大変だった……遠い目をするぼく。――ンンンンンだかァら! 嵐のごときHong-Kong!!! 大好きだぜ狂人の都魔人の街廃人の掃き溜め!?! 誰だ今香港を馬鹿にしたやつは! よぅし待ってろピエロが走る! ひた走る! 君に届け足掻け穿け轟け鉄の華!!!!! 花咲くための準備はできている! ああッッッこのツェッペリンにはベイビーの吐息が詰まって浮いてるるるるから最後まで話させろいやめてったらーッ! 火は! 火はまだ駄目なの!!!! 朝になったら太陽熱でテルミット反応して発火して大爆発する予定なんだから待ってーッッッ!!! ぎゃだ――――!!!!!! キミィイイまたですか! 引き裂くのも待って――ッ出落ちは嫌なのぉおおお!!! おいらは銀ロッドと生き死にしたいの――!!! ファンになっちゃったのー!!! ルルルルルル♪ ホンコンガー弐号機つくゆぅうううううううのッッッ!!! 今度は飛べるのッッッ!!! ……えっ、ヒンデンブルグだけだとほとんどスッカスカだから全然パワー足りない? ――――来いッ! グラーフ・ツェッペリンII・二世ッッッ!!! えーと、あと、えっと、色々来いヤァかむひやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああうわああああああああああああああああああああああああああああああああああ堕ちちゃうのほぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ❤❤❤」




 ――響いてきた。


「…………あのクソピエロ今度こそぶち殺してやる」


 呻くように言うと、隣からくすくすと笑い声が聞こえた。

 師匠だ。


「大変じゃのう、我が愛弟子よ?」

「……すみません。年明けの俺が甘かったです。アレぶっ殺しておかないとまた後で面倒そうです、って言うか、デートどころじゃないかもです」

「よい、よい――それを言うならば、わしも昨年アレの兄を斬っただけであったからの。手ぬるかったわ」


 ふむ――と、師匠が見上げて唸る。


「見たところ、概念術士まで到達しておるか。既に存在しないもの、滅んだものを再現するとは……よい実戦となろうよ」

「個人的には、二度とツラも見たくなかったんですがね。……仕方ねえ」


 カッ、と笑って、師匠を引き寄せ抱きかかえる。

 "銀杖"を抜き放ち、跳躍する。

 銀の髪と、銀の杖――銀のピアスを、月明に光らせながら。笑いながら、叫ぶ。


「とっととぶちのめしてデートの続きだ!」


 師匠の方も腕を絡めて、ぐっと抱き着いてくる――その衣服が光を放ち、ドレスに変わった。


「うむ――この埋め合わせは盛大に、の?」


 豪奢な純白のドレス。

 布は多く、フリルも多く。ヴェールによって顔も隠されている。

 強く抱きしめる。その身のやわらかさを享受する。

 ――それは、ウェディングドレスだ。


「勿論です――この身は師匠のものだ。師匠が望むならば、いくらでも」

「……シルヴィと呼ばんかこんな時くらい!」

「めんどくせえなあもう! わぁったよ! 今骨折るなよぐあああ肋骨! 遅かったかちょっとは躊躇しろよぉクソババァ!!!」


 クソが、と。折られつつも抱きかかえながら、俺は叫ぶ――


「覚悟しろよ、シルヴィっ! これから全部! 片っ端からきっちりまとめて愛してやらぁっ!」


 ――香港の、夜を跳ぶ。







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 Hong-Kong!!!


 見ゆるか空行く浮遊島!


 かくも名高き天空街都!


 今や十二国志の第十三国!


 おお、Hong-Kong!!!


 魂輝き命煌めき生を謳歌す天空に!


 見ゆるか眩き銀の色!


 混沌呑みこみ乱脈溢るる街都にて!


 今宵も疾呼走駆殴打哄笑!


 今や十二国志の第十三国! その名も!


 Hong-Kong!!! Hong-Kong!!! Hong-Kong!!!




 ―― Hong-Kong!!!