〜分析結果サンプル〜
中華邪仙ド貧乳エルフ師匠をちんぽでこらしめるやつ@NEO/鵺野新鷹
Hong-Kong!!!
出会いがあれば別れもありき!
満点月下の天空街都!
今や十二国志の第十三国! 親離れはとうに実行!
Hong-Kong!!!
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見上げる天に、月が昇っていた。
満月だ。
元々明るい香港の空だが、満月のせいで本当に星が見難い。常人であれば星がひとつも見えないだろう。
……政庁の屋根は、2月の夜気で冷え切っている。
寝転がれば、熱くなった身が冷却されるような心地になれた。
「はぁー……」
状況を一言で言うならば、『飲んじまった』だろうか。
なんで警察メンツが飲ませるんだよアホか。って言いたいところだが、ともあれ酔いが回りきらないうちに外に出てきたって状況だ。
師匠に付き合わされて飲むことはあるし、なるべく断る、なんとなく飲みたくない、そもそもまだ酒の旨さも分からない。
っつーかロリババァはどこに行きやがった、なんだが。どこかで迷惑かけてねぇだろうな。張さんとか。
と、屋根を踏む足音が聞こえた。
「こんなところにいたか。――"黒剣"」
「やめろよ、キメラレッド」
多少酔っているのか、冗談を口にしながら、アランが屋根に上ってきた。
腕を翼から人間の腕に戻しながらの登場だ。
羽根音が聞こえなかったあたり、梟か何かだったのだろうか。いよいよもって何の獣人だか、だ。
魔力は感じなかったので、おそらく人間体と獣人体を任意で変異させることができるタイプではある――《人化》、あるいは逆に《獣変》などを使っているわけではないと思う。
あるいは魔力の隠匿が異様に上手いか、だ。
アランは、グラスと酒ビンを持ってきている。
「追加を持ってきた」
「俺ぁ未成年だ」
「俺も未成年だ」
「マジかよ」
「鋳造されてから、まだ20年は経っていない」
鋳造――に少し引っかかるが、流しておく。
このご時世、色々といるものだ。
深く踏み込むと恨まれそうというか、いつもより口が軽くなっているってことは分かる。
ここ一週間ほどショーの練習で多少付き合ってきたわけだが、その短い付き合いでも、偏屈なやつだってことは分かる。
「ほぉー。……ま、いいや。寒いところで飲むこともねえだろ。戻る」
「そうか」
……ちょっと残念そうな顔をしているように見える。
基本的に無表情なやつだが。
「っと」
下を確認して、ぴょいっと飛び降りる。
アランも続いてきて、二人でてくてくと戻る。
政庁も今晩ばかりは宴会場だ。
明日で祭りは終わりだが、片付けが入ってくるため、騒ぐに騒げない――ということらしい。
「……いつまで続くんだろうな?」
「宴会予算が尽きるまでだ」
「それっていつだよ」
「朝まで持つよう計算している」
「アホじゃねえの?」
「俺もそう思う」
近づくにつれなんだか暖かくなっているような気もする。
宴会の熱気だろうか――冬場だってのに野外立食。
胡坐をかいた巨人の横を通って、宴会場内に踏み入る。
近所の飯屋からドカドカ飯と酒が運ばれてくるが、ドバドバ無くなっていく。
「いっぱちゅうげいげげげ――!」
「うぇじぇじぇじぇじぇじぇじぇ――!」
「えげろげげげげ――!」
何語だ。
「すまない上を通るよ」
たじろぐ俺の頭上を、異様に軽やかに、丸い肉が通って行った。
その両手にはテーブルが乗っている。
「さあ! 追加だ!」
言葉と同時、テーブルが宴会場中央に投げ込まれる。
テーブルには無論のこと料理が乗っており、そしてそれは、投光器によって照らされた宴会場の中、異彩を放っている。
文字通り光り輝く異界料理の数々がそこにあった。
ドワォ、と、宴会場が沸く。
「総督飯だ――!」
「ちげぇよ謎の屋台人Xによる料理だ! 総督に料理なんかさせられるか!!! だからアレは総督じゃねえQ.E.D.!!!!!!!!」
「せやな――!!!!!」
とか言いつつ狼獣人と虎獣人が殴り合っていて、巨人が手を伸ばしていて、ドワーフが突撃してゴーレムに止められ、妖精が喧騒をすり抜けて一番乗りしている。
カオスもいいところだ。
「お前は行かねぇの?」
「俺は食える。機会があれば他人に譲るべきだ。父上の料理は美味い。――行かないのか」
俺の方は、流石にしり込みすると言うか――どこをどう見てもひと口一万円級の料理なので、ダメだ。
最近はだいぶ矯正されてきたが、ハンバーガーでもわりと贅沢な飯って感覚がまだ抜けきらない。貧乏舌で、その自覚もある。
肩をすくめつつ、言う。
「……あんな美味そうなの食ったら気絶しそうだから、やめとく」
「そうか」
とりあえず暖房機前に陣取って、アランに視線を送る。
グローブの手がグラスを放ってきて、ついで、酒ビンが寄ってくる。
とくとくとくとく、と注がれる。
「あーどもども。おつかれおつかれ。なんにせよ、大きな失敗なくできてよかった。撮影会でも大人気だったらしいじゃないか」
「ああ……いや。紅可欣を人質にする予定だったというのに――貴様。うまく行ったからいいものを」
「すまんな。許せ。私情だ」
「どこに許す要素がある貴様」
グラスを傾け、アルコールを喉に通す。
喉が焼ける――胃が熱くなる。
思わず顔をしかめ、言う。
「……ぐえー。だいぶ強くねえか、コレ」
「そうか?」
くい、とアランは悠々とグラスを傾けている。
なぜだか師匠と同じにおいを感じると言うか――そんなに強くないくせにカパカパ飲むタイプなんじゃねえの、コイツ。というか。
「お前。一応今日、あれだろ、暗殺予告の日じゃねえの?」
「問題ない。アルコール排泄は1秒あれば可能だ」
「まあ俺も似たようなもんだけどよ……」
「それに、父上は料理最中を見られることを好まない」
と。
視界の端を、背の高い影が――竜人、ジェームズさんが横切った。
「そう言えばだが――」
「ン」
アランが話しかけてきたので、改めてそちらの方を向く。
「――紅可欣のことだが」
「おう」
「……あの娘、髪を染めてはいないだろうか」
「髪?」
「ああ。カラーコンタクトはどうだ。あるいは変身魔術の類は」
「ン……いや。多分、ないと思うが」
「そうか」
何かに納得したように、アランは酒を飲む。
そう言えば草野球の時も、ケイを見てたな、と思い出す。
「知り合いか何かか?」
「いや」
酒が入っていなければ、おそらくアランはここで話題を切っただろう。
アランは言葉を続けた。
手元に視線を落とし、何かを思い出すように呟く。
「……知り合いに似ているな、と思っただけだ。あの娘が生きて、まだ香港にいるならば、あのくらいの年齢だろうが……」
「はーん……? なんだ。ナンパかなんかか」
「違う。そも、俺は……いや、なんでもない」
「なんだよ、べらっと喋ったかと思ったらイイところで切りやがって」
「貴様を楽しませるために聞いたのではない。忘れろ」
「へぇへ……」
くい、とグラスを傾ける。
水替わりにもなりゃしねえ。
以前調べたところ――師匠が飲みすぎるんでその介抱のために――アルコールは加水分解だ。
茶でもねーかと周囲を見回したところ、人魚さんの足元の水を飲んでるアホが見えた。何やってんだアレ。塩水だからもっとダメだろ。
アホの横顔はスケベ心満載のそれだ。
「辛党でも塩水はつまみにしねーだろ……」
師匠は甘党――つまみは甘い奴が好きなクチだ。
上杉謙信は、塩をつまみに酒を飲んでいたらしいが、それが原因で死んだとも言われていたような気がする――などと思っていたら、アホが悲鳴と同時に尻尾ビンタを食らった。
そして、顔面騎乗を食らい、顔全体を水で覆われていた。
ががぼげぼがぼ、と、鼻口から空気を漏らしながらもがくアホ。
ふは、と笑みが漏れる。
ははは、と笑いが漏れたところで――ばつん、と電気が消えた。
周辺一帯の電気が消えている。
また停電か。
"白雪姫"来襲あたりの大雪で炉心に負荷がかかって調子が悪いみたいなニュースはラジオでも言っていたが、よりによって春節中に。これだからゴーレム系が根付かねえんだよ香港、
「――ん?」
ふと、上空に影。
満月を横切るように、黒衣の人物が跳んでいた。
小柄な影だ。
誰だ、と。そう思った。
「――父上ッ!」
アランが駆けだす。
はっ、と、俺も駆ける――"銀杖"は手元にない。
武器に頼るか未熟者が、って師匠の声を幻聴する。
「っつか"銀杖"で打ったら死ぬよなマウスだったらよッ……!」
総督は料理を運んだあとどこかへ歩いて行った――おそらくまた追加の料理を作りに行ったのだ。
ガラスが砕ける音が二連続で聞こえてくる。
片方は黒衣の人物、もう片方はアランだろうか。
政庁には職員食堂があり、総督はそこで料理をしているらしい――
「ふっ!」
俺も窓ガラスをぶち破って、中に入る。
暗闇の中、コックと化した総督と、それを守るように四つん這いで威嚇するアランと、黒い外套で全身を覆った、小柄な人物がいた。
グルル、といううなりと同時、アランの身がざわざわと沸き立つ。
全身から毛が生え、そして輪郭が人体から逸脱していく。
見るだけで、サーベルタイガーじみた牙、恐竜じみたカギ爪、蛇の尾に馬のような足、背からは人の腕と翼が同時に生えてきている。
メキメキと音を立てて、その身が拡張されていく。
「オオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」
にまり、と、黒衣の中で、それは笑ったような気がした。
恐ろしいまでの速度で飛びかかったアランは、蹴りで迎撃された。
上段回し蹴りの一閃――質量が違う。アランの頭部にヒットした脚は、一瞬止まり、――メキリ、と牙を砕いて、顎を砕き、アランの首を引っこ抜きかねない程に伸ばし。
更に黒衣が回転し、後ろ回しの踵が二連で入って、アランを撥ね飛ばす。
衝撃波を伴い、食堂の壁をぶち破って、アランが消えていく。
「――――!!!」
回し蹴りの回転を止めたところで、黒衣のフードが剥がれた。
それは灰色の髪をしていた。
「――マウスッ!!!」
俺が砕いたガラスはまだ宙にある。
いくつかの欠片を手に取り、そしてそのまま投擲する。
マウスは俺の方を見て、ちょっと驚いたような顔をして、黒い外套でそれを弾いた。
マウスの口元が歪む。挑んでくるかと、挑発している。
アランの動きを見て確信した。
こいつは間違いなく俺より強いと。
クソピエロの時には手加減していたのか? 偽装していたのだろうか。確かに速かったが、体術には優れていたが。
いや、それにしたっておかしいだろう。
どう考えてもおかしい。
クソピエロの時は本気の危機もあった。だが、こんな力を発揮することはなかった。
師匠が何かしたのか?
「せぁッ!」
だがそれでも止めねばならない。
まだ、未遂である。
体格的にマウスは小柄だ。
蹴りのリーチと俺の拳のリーチがほぼ等しい。
左足を前に出し、左拳で顔面を殴りに行く。拳も捻りこまず、ボクシングで言うジャブを放つ。
マウスは一歩引いて拳が伸びきった場所に立つ。
拳に柔らかい――おそらくは唇の感触があった。
「――――!」
拳を引く、肩を回す腰を回す。全身を連動させる。
拳が音速を超える。
発生した衝撃波が食堂内の諸々を吹っ飛ばす。
「ッ、」
ぬるり、と懐に潜り込まれて、肋骨に両手が当たった。
ただ触れるだけのようなそれだったが――次の瞬間、マウスが踏み込み、そしてその衝撃が100%肋骨に伝わった。
「――がッ!」
身が浮きもしない。衝撃が全身を走り、胸骨が粉砕される。呼気が搾りだされ、続いて血がどぼりと溢れ出た。
その血を避けるようにマウスはくるりと回転しながら跳び、そして全身の勢いを乗せた回し蹴りが、俺の側頭部を襲った。
衝撃――そして地面に薙ぎ倒される。
「…………!!!」
口から出るのは血だけだ。
肺が破れている――再生までは動けない。
内臓がほとんど殺された。
辛うじて残った力で肺を必死に再生する。
心臓が破れていないのは慈悲によるものか。
辛うじて生きている。
「……君。名は」
「マウス。――否。マウス・姜」
「……成程。やはり、そうだったか。だが、君は違うな」
総督の声が聞こえる。
「尻の礼か」
「それもある」
「印璽は見つからなかった。君、が――盗んで行ったのだな」
無言の間があった。
倒れ伏しながら。それを聞いていた。
「……成程。だが、大人しく殺されてやるわけにもいかん。契約違反であってもだ」
総督は言う。
床を冷気が伝う。ギギギギギギギギ、と氷を削る音がする。
「我が名は姜龍――またの名を"あまりにも美しく舞う豚"!」
「"快盗"――マウス」
「いざッ!!!」
次の瞬間、轟音が響き――そして冷気が届かなくなった。
じゃり、と、軽い足取りが、俺の方に近寄ってきた。
ふ、と、それは笑ったようだった。
宴会場側から、人が集まってきているのを感じる。
「……さようなら」
マウスはそう言って、飛び去る。
……外から戦闘音が聞こえる。
げぼ、と肺の中の血を吐いて、立ち上がる。
濛々と立ち上る埃の中――腹肉を貫かれ、壁にめり込み血を流す総督の姿があった。
ピクリとも動かない。
手足はおかしな方向にねじ曲がっていた。
肋骨を治しながら、俺は外へと向かう。
外の戦闘音が、もうやんでいた。
クソが、と思う。
追わねばならない。
「ちち……うえ……」
アランが、ふらつきながら、怪物じみた身を折りながら、食堂に再度入って来るのが見えた。
/
惨状――と、言っていいだろう。
宴会場は血の海だった。
一応、誰一人として死んではいないようだったが、動ける者もまた、誰一人としていない。
「"銀杖"くんっ……!? じぇ、ジェームズさん、がっ……」
頭から血を流し倒れ伏すセシリアさんが、俺を認めて、涙目で言ってきた。
「逃げた、襲撃犯、を、追ってるっ……! た、すけ、てっ……!」
「――任せてください」
口端の血を拭いながら、頷き、跳ぶ。
満月下。
跳びあがってみれば、停電になっているのは政庁一帯だけだと分かる。
計画的な停電だ。
全力を持って跳躍する。
目印はある。
空にはジェームズさんの竜体が見えている。
痛む肺で呼吸を繰り返し、必死でそれを追う。
「っ、っく、ッ…………!」
何か悪いことが起きるような予感があった。
追わねばならない直感があった。
ジェームズさんが急降下する――竜体が縮んでいく。
一日に二度の竜化だ――無理が祟ったか。
「クソッ……!」
到着まであと20秒。
停電の端にて、竜体が上空に打ち上げられるのが見えた。
到着まであと10秒。
クソが、と、思い、叫び、大跳躍。
ジェームズさんが打ち上げられた、その下に到着し、そして、
「――ン。なんじゃ、おぬしか」
師匠の声に、出迎えられた。
普段の身長に――普段の姿に戻り、普段よりはカジュアルな格好をした師匠が、そこにいた。
師匠は左手に剣を持っており、右手には首を持っていた。
「丁度良い。見よ。総督を殺してきたなどと抜かしていたのでな。この通り――」
と、師匠は右手を掲げて見せる。
その右手は、灰色の髪を持っている。
「――首をねじ切っておいたわ」
首から下は、足元に転がっていた。
「な、あっ、え……?」
「いやあ、強くなりたいとか言うのでな、超人薬を渡したのじゃが。わしとしてもまさかでのう」
ふー、と、師匠は溜息を吐く。
「あの豚小僧は、一応は友人での。その仇を手っ取り早く討たせてもらった、というわけじゃよ」
「そっ、そう、でっ、……え……? 首っ……」
どっこいしょ、と、師匠は首を置く。
ねじ切った、という言葉は、嘘ではないのだろう。
首の断面は、肉が引きちぎれているし、首からは、背骨が少し出てしまっていた。
だから、マウスの首は、ころん、と転がった。
「む。――と」
師匠が、ひょい、と脚を出す。
降って来たジェームズさんが、その脚先に受け止められ、ぐぼ、と血を吐いた。
「ま、後はこやつに任せておけばよかろ。帰るぞ、弟子よ」
師匠はジェームズさんを地面に転がし、剣を鞘にしまった。
そして、俺の方に笑みを見せてくる。
気安い笑みと言っていい。
「……おい」
「なんじゃ?」
「……なにやってんだよ、クソババァ」
視界が少し滲んでいる。
ぐ、と指先でぬぐって、歩み寄る。
師匠の足元――首と身体は、既に血を流しきっている。
その首に。その首の頬に、触れる。
もう冷えていた。
2月の夜気に、生きていた熱を奪われていた。
「なんで、なんでマウス殺してんだよッ……あんたならっ! 殺さずに収めることだって、できただろうッ!?」
師匠は、沈黙した。
何を言うべきか迷っているような、そんな沈黙だった。
結局、震える声で、口を開いた。
「……その。家で、待っておる。あまり……遅くなるで、ないぞ」
「いや、待てよ、師匠」
首を持って立ち上がる。
耳に手をやり、ピアスに手をかけ、ぶちり、と耳たぶを裂いて引き抜いた。
「……返す。二度と帰らねえ。――今までお世話になりました、クソババァ」
ぽかんと、師匠は口を開く。
あ、とか、え、とか。
そんな言葉にもならないような息を吐くその胸に、ピアスを放る。
「……あっ……えっ、……は、話を、話をしようではないかっ!? おっ、落ち着いて、その、話を聞いてはくれんかっ!?」
マウスの首と身体を持ち上げる。
そして、ジェームズさんを揺り起こす。
「よ、よいからっ、ほら、こ、これっ、つけ、付け直してっ……!」
背中に手が当たる。
マウスの首をねじ切った手が、だ。
「――うるせぇぞッ! 失せろ、"銀精娘々"ッ!」
振り返り、腕を振り、叫ぶ。
腕が"銀精娘々"に当たり、跳ね飛ばした。
ずでん、と"銀精娘々"は尻もちをつく。
なんと、初ダウンだ。
は、と笑って、改めてジェームズさんを揺さぶる。
後ろから、ぐす、と、何かが聞こえた。
「す、すまん、その、実は、」
「耳が遠いか、クソ女」
振り返り、睨みつける。
「失せろ」
「…………!!!」
"銀精娘々"は、びく、と身を震わせ、のろのろと立ち上がった。
ジェームズさんが、む、と唸る。
「っと、ジェームズさん……! 大丈夫ですかっ」
ぐすぐすと泣きながら去っていく気配を感じながら、ジェームズさんを揺り起こす。
満月は曇りなく、路地を照らしている。