エロ率分析 (α)

〜分析結果サンプル〜





 じっ。


 見られてる。

 どういうわけか、俺は山下 宮子に観察されている。

 でもまあ何の因果か知りたくないが、そんな山下は雑務課に来ちまったわけで、俺は課長命令で仕事を教えろって言われたから渋々先輩ヅラしてるって寸法だ。


「――そういうわけで我が社での企画部っていうのは、企画開発じゃなく、企画経営をするわけだ。会社の経営に関わると言えば聞こえは良いが、実際のところ雑務課は心臓みたいに重要なパーツじゃなく、酸素を運ぶ血液ってところだな。体が動きたいっていう欲求に応えるのが仕事だ。」

「わかりましたっ。」


 元気でよろしい。

 華奢で――俺から見たら大体の女性は華奢だが――身長は結菜とどっこいどっこい。だが細身の体躯だからか、結菜より小動物っぽく見える。まあ結菜は犬っぽいから、そうかと納得できる。


「ま、つまり具体的な仕事内容は、何でも屋だな。」


 と、俺は山下に雑務課の仕事を説明した。



   *** ***



 慣れないことをすると疲れるものだ。


「はぁ……。」

「お疲れさま、望月くん。」


 手を着けてなかったプレゼンの資料整理をさせて、実力を計るとともに、俺はコーヒーでも飲もうかと、トイレに行くフリをした。

 そしたら山下を俺に押し付けて、どこかに行ってしまっていた寺田課長がそこにいた。こんな朝っぱらから社内でサボれるのは企画部の雑務課くらいなものだろう。


「さて。」


 寺田課長はどこのゲームセンターの物か、どこの国の物かわからないが、日本円じゃないコインを取り出してニヤリと笑う。


 ――キィン…………パシ。


 あー、こりゃ、表だな。

 なんでか、そんな気がする。


「表。」

「おっ……正解だ。」


 おー、やっぱり。当たりやがった。

 結菜と会ってからこんな、ちょっとした幸運が続いてるような気がする。

 まあ、幸せにボケているだけかもしれないけどな。


 意外そうな顔で、なのに俺が当てたのを少し喜んでいるふうな課長。そしてポケットを漁って、自販機に120円を入れて缶コーヒーを奢ってくれる。


「はい、いつもの。」

「ありがとうございます。」


 課長は、俺の対面に座る。


「どう? 彼女。」

「どうもこうも。一体どんな陰謀に嵌められてるんですか?」

「自称、山下が今度やって来る山崎支社長の娘さんなのは間違いなくて、入社4年目の、新人に毛が生えた程度の人材なのも間違いない。」

「そうですか。」


 課長はニコニコと笑う。

 しかし、前までののほほんとした表情ではなく、陰が混じった策士顔になっている。


「俺としては、そうですね。ここ最近、齋藤部長の件から一週間も経たずに、山崎支社長の本社復帰に合わせた山下の雑務課への配属を聞くとか、陰謀の臭いがプンプンしてるんですが。」

「……? 当然じゃないか。」

「はぁ、、、それで、どういう寸法なんですか?」


 最近になって課長が巧妙に腹黒さを隠していると知った。その事実が妙にしっくりきて、俺は自然に新らしい課長を受け入れていた。


 そして、ここ最近のアレコレを振り返ってみた。齋藤部長がなんで俺を引き抜こうとしたのか、山崎支社長は帰ってきて何をする気なのか、山下の役割は、何故雑務課なのか。

 それぞれにどんな意図や意志が働いたか、全貌はわからない。が、よく考えなくとも見えてくる線を辿ればハッキリと繋がっている。


 重要なのは、おそらく動いているのがすべて反金城企画部長の人間だっていうことだ。

  

「もしかして、金城部長の、、、支社送りが目的、ですか?」


 山崎支社長は元々副支社長として支社に異動していた。金城部長を一見昇進すると見せかけて、自分より格下だと思い知らせて、そして中央から遠ざけるには、支社でNo.2程度の役職につけるのが適当だ。自分が以前に辿ったルートだから、その意味も知るだろう。その先に誰がいるのか。


 それで正解だったのか、寺田課長はニヤリと笑う。


「冴えてるね。」


 その声は、まるで今まで俺が視野狭窄のボケナスだったと告げられてるような印象を抱かせる。

 かつて馬鹿に嵌められた俺にはピッタリだ。


「少し、歴史の話をしようか。」

「歴史……?」

「まだ我社にマーケティング部の先走りも無いような、僕も入社する前の話だ。」


 そこで区切って、課長は語り出す。


「若い二人の社員がいた。二人は日々会社の利益を上げるために働いた。一人は商品を売り込む営業部の一員として、もう一人は会社を経営する企画部の一員として。二人は本社に同期入社した関係で、社内でも良い出世株のライバルとして思われていた。


 だけどね。


 二人ともプライドが高く、ビジネス上の関係は良好だったんだけど、二人で飲みに行くような間柄じゃなくなったんだ。それどころか社内でそれぞれの期待もあったのか、いつも相手と比較されてきたからかな、二人の仲は、恐ろしく険悪な状態にまでなっていた。

 いつも考えるのは、いかに相手を蹴落とすか。それだった。

 まあ、そんな姿を目の当たりにしていたからこそ、僕も齋藤も仲間割れはしないようにしようって思ってたわけなんだけど。それはおいといて。


 先に部長になったのは、企画部の若手のエースと呼ばれていた中堅。彼はその当時、いかにしてその地位を確固たる物にするか、それを考えていた。そこに、突如として彗星が現れた。入社したての新入社員に毛が生えたくらいの若者が、営業戦略を立てた。数値として、商品の売り上げと売り込むタイミングを関連させた、予言のような販売予測だった。」


「え。」


 聞いたことのある新人だ。


「そして、それは見事に的中したんだよね。」


 寺田課長はニヤリと悪い顔をした。

 普段の柔和な寺田課長を知っているだけに、似合わねぇな、なんて思った。


「企画部の新部長は、その価値を正しく理解していた。だから、望月くんに部長肝煎りのプロジェクトの販売戦略を任そうとした。」


 ……なんだって?


「ところが、望月くんは金城部長に目を掛けられてしまっていたから、出世株の中でも頭一つ飛び抜けてしまっていた。それを妬んだのは、望月くんの同期。そして怯えていたのは当時の課長。

 さて、ここらどんな悲劇に繋がるか。望月くんはよく知っているだろう?」

「……当然ですよ。」


 俺は、その当事者だ。


「その当時の課長はわかりもしない物に手を出して、見事に失敗した。あの時の金城部長の怒りっぷりは形容しがたいものがあったよね。そして、その怒りは当時の課長と、そしてなぜか君に向いた。正直なところ、当時の課長は責任逃れに失敗していた。だから、今はいない。そして、君も居場所が無くなっていく。」


 俺は、課長の大演説を淡々と聞けていた。

 客観的に語られる当時の状況を、俺は淡々と受け止められている。

 あるいは聞いているようで聞いていないのか、まるで自分のことじゃないようにさえ感じられる。


「だけど、僕たち営業の側は、その失敗を歓迎した。ごめんね? それを契機に企画に楔を打ち込めるチャンスだと思った。ああでも、その前に会社の損失を埋められるだけの働きを見せた山崎元副部長が山崎元部長に出世したんだ。


 そして、僕という楔が打ち込まれた。


 僕はね? 元々は、なんで金城企画部長が失敗したか、それを調べに来たんだ。しかも僕は金城部長に甘言を駆使して、雑務課を新設してもらったんだ。当時、僕らの争いに中立的だった取締役の人に上手いこと電話してもらってね。

 そうなれば、激昂していた金城部長の目を掻い潜って、調べてすぐにわかったよ。中心人物が君だったということに。」


 俺は、何かとんでもないものを聞いているような気がしていた。


「金城部長も馬鹿じゃないから、しばらくして怒りが収まってくると、今度は君という生きた劇薬の存在の扱いに困り出した。正しく使えれば頼もしい。しかし手許に置くにはしっぺ返しを喰らいかねない。君は、自分で思っているよりずっと優秀だった。僕が知っている普段の望月くんからは想像も出来ないほど、ね。僕が企画部に来たときは、まだ望月くんもエネルギッシュだったと思うけど、覇気が無かったよね。最近は、少し元気になったかな?

 まあでも部長には、雑務課という箱は都合よく見えただろう。何せ自分の傍に置けるのに、近すぎない。最悪切って落とせる。かくして望月くんは一見昇進に見える左遷を受けて、課長補にもなれない日々を過ごしている、というわけさ。望月くんがリストラされないのは、会社が好景気を保っていること以上に、君という劇薬を手の届く範囲に残しておきたいという金城部長の怯えがあったからだ。」

「なっ……。」


「ただ、話はこれで終わりじゃない。


 僕は望月くんの発見と同時に、使える人材の発掘も並行して行っていたからね。君の同期の和田くんは、君の働きをよく理解していて、そして君を擁護していたから金城派からよく思われていなかった。だから僕は山崎元部長の昇進に合わせて新設された、齋藤の元マーケティング課の戦力として引き抜いたんだ。


 元マーケティング課は成功し、その後金城部長の首をジワジワと絞めはじめた。山崎元部長は今後を考えて、元マーケティング課を現在のマーケティング部に昇格させることの引き換えに、支社への異動を受けた。これで若き齋藤マーケティング部長の誕生となったわけだ。


 そして支社での働きや、マーケティング部の快進撃も評価されて、今度帰ってくることが決定した。


 さて、問題だよ望月くん。僕は、なんでこんなことを話したと思う?」

「あ……っ。」


 咽が、カラカラだった。

 手にしていた缶コーヒーに結露した側面の水滴が、俺の指の縁に溜まってツツッと流れているのが見えた。

 反対の手で持ち直して、左手は振って水気を飛ばした。

 グビリと飲んだコーヒーの味も、わかりゃしねえ。


 そして一息吐く。


「……俺が話の中心だって課長は言いましたが、それで煽てられる俺じゃないのは課長だってご存知でしょう? そんな権力闘争の重要人物が俺ということもないくらい、わかりますよ。そうでなければ買い被りすぎです。もっと複雑な要因がいくつも絡んでいて、その流れの中に俺というピースも存在する。それ以上の意味はない、と思ってます。そのピースの一つに数えられる存在だった、ということですら俺には過分です。

 だとすれば、話の本質をわざわざズラしているのは何でですか? 課長は俺を褒めたいのでも激励したいのでもない。」


 俺は、まるで自分のことのように思えないから、妙に冷静だった。


「おそらく俺という人間の能力と、そして俺の立ち位置、これが課長にとって非常に役に立つのではないですか? ……俺の能力は、、、課長がその気になれば、通常業務の一環としてこっそり重要なこともやらせてしまえばいい。――ああ。課長が俺に話したのは俺の立ち位置が、いいえ、雑務課という立ち位置が重要なんですね?」


 課長は、コーヒーの缶をボヤッと眺めてニヤッと笑う。

 つまり、正解か。


「この前、齋藤が来ただろう? あの時、齋藤は本気で望月くんを引き抜きたかったわけじゃないんだ。」

「はぁ。」


 どうせそうだろう。


「君の見極めという目的と今までずっと、いつの間にか働いてくれていたことへの感謝、これは本当だろうね。けどもう一つ。主な目的は金城正に宣戦布告をしにきたんだ。釘を刺しに来たと言っても過言じゃないと思う。」


 その程度は誰でもわかることだから、俺のなぜ? と問う顔に答えるように課長は続ける。


「僕らの陰謀は、ここ1年の間でいつ起きても不思議じゃなかった。山崎支社長の凱旋はいつでも出来た。正直、僕にとっても齋藤が君を訪ねたのは予想外のタイミングだった。なら、齋藤にも予想外な何かが起きたんだろう。山崎新専務の就任がいつか、金城部長にバレていた。それだけならまだわかる。金城部長は山崎専務の就任に際してケチを付けたい。まだ、自分がライバルであると知らせたい。」


 そこで区切って、課長はコーヒーを飲んだ。


「金城部長が主導の新しいプロジェクトが動くよ。間違いない。」


 課長は俺を見る。

 乗るか、反るか。

 山崎派か金城派か。

 俺に、選択を迫っている。

 

 陰謀は、嫌いだ。

 嵌められて、堕とされたことがある。

 誰かの派閥に付くことなく生きられた雑務課の日々が、急に遠退いた。


『我々雑務課の仕事は多伎にわたり、これといった決まったタスクを片付けるのではない。』


 かつて、課長に言われた。たった一人しかいないような閑職で、しかし何年も続けて来たような風格があった。雑務課の存在を俺に知らされていなかったのは、出世コースの人間には不要だったからだ、と思っていた。

 しかし違った。

 ちょうど、俺が雑務課に異動するちょっと前に出来たから、それだけだった。


『だけど、我々は我が社の各所を廻る血液に似て、なくては円滑な業務が滞ってしまうだろう。』


 一人しかいなくて何を、と思ったこともある。

 実際、仕事はいくつもいくつも飛び込んできて、それらは確かに他人が業務を円滑に行うのに必要なものばかりだった。そして、それらをこなしているうちに、効率よく捌けるようになって暇になった。

 そういうふうに効率よく捌けるようになって、課長がもっと仕事を持ってくるようになってわかった。ほとんどすべての部署に顔を出しているうちに、やるべき仕事の全体像が掴めるようになっていた。


 そう、雑務課は他のどの部署よりも多くの雑多な情報を掴むことができる。


「……俺は、いつからスパイに仕立てられていたんですか?」

「スパイだなんて人聞きが悪いな。僕たちはただ、みんなに仕事はありませんかって、聞いて回っていただけじゃないか。」


 金城部長が新規プロジェクトを主導しようと動いている、と仮定すると、様々なピースがピッタリ当て嵌りやがる。

 俺は、すでに課長の手の平の上で踊らされている。これはもう乗るか反るかなんて次元の話じゃない。

 YESしか答えは残されていない。


「……ポストは、俺の報酬はなんですか?」

「企画部第一課長なんてどう?」


 完全な金城派の排斥か。企画部に山崎派は少ない、というか雑務課以外にいるのか? なら、第一課長のポストは他部署から連れて来るか、俺か。

 けど、ここで欲の皮を突っ張ってもいいことはない。


「第一課長ってことは、兼副部長ですか? 寺田課長が企画部長になるなら受けますよ。」


 我が社では通例、副部長のポストは課長の兼任として、ほとんど第一課長がなるものだ。例外は営業部とかで、あそこは営業利益に応じて第二課長が兼副部長になったりする。どちらにせよ、同列の課長ポストという建前と、内部では明確な序列があるという二枚舌を実現している。


「すべて、上手くいけばね。」

「りょーかいです。」

「まあ、ボチボチ被害を少なくする方向で頑張ろうよ。僕らの方針としては、まず、金城部長の新規プロジェクトに参加して、成功に導こうじゃないか。望月くんの努力の使い所だよ。」


 ん? 失敗させなくていいのか?

 そんな俺の感想を他所に、課長は飲み終えた缶を捨てつつ立ち上がる。


「会社に損害は出せないし。……そろそろ望月くんを昇給だけさせるのも難しくなってたし。よかったよかった。」


 なんだって!?


 あ。うん。

 いや、確かにそうだ。

 昇給も昇進も、最終的に金城部長がハンコを握ってるとはいえ、評価自体は課長とか、もっと近い上司がするものだ。雑務課に飛ばされて評価もクソも無くなって、ただ年功序列的に給料が上がってるのだと、完全に思わされてた。


 ああ。俺はまあ、なんてボケナスなんだって話だ。


 寺田課長は、二重スパイをするように要求して、きっちり俺の手綱を握ってきやがった。

 世の中、恐すぎる。


 俺は逆らいませんよと、両手を上げて降参のポーズをとる。


 陰謀とかが嫌で苦手な俺を働かせるんだ。安全の方は課長に守ってもらわなきゃ割に合わない。結局、何だかんだ言い訳で取り繕っても、俺にも昇進の野望とかあるわけだ。

 ははは。

 上がれるときに上がれるなら、使われていても構わない。というか、俺はリーダーって柄じゃないから、精々頑張って気ままな中間管理職に収まりたいわけなんだ。


 正直、ちょっと前までの寺田課長のポジションは、かなり羨ましいと思ってたし。

 だから課長が部長になって、俺がその下のポジションなら、まだまだ気ままにやれるんじゃないかって、そんなことを思った。


「……ところで、山下はどうすれば?」

「うーん。ちょっとまだ意図が掴めてないから、、、普通に、雑務課の仕事でもこなしてもらったら? ちょっと特殊だから、並行していくつもの仕事を抱えるっていうのに慣れるまで指導してあげてよ。」

「はぁ……。」


 そんなんでいいのか?

 まあ俺は、やれと言われたことをやる、それだけなんだがね。



   *** ***



「かかりちょー。」


 山下の言動は結菜と比較しても、狙ったように幼く見える。つまり、あざとい。


「これどーしたら、いーんですかぁ??」


 今まで生きてきた中で、不安そうに周りを見るだけで助けてもらえて生きてこれた女の仕種だ。

 ちっ。

 上司を自分のデスクに呼び出そうとするのが間違ってると、教わらなかったのか?


「一旦保存して、こっちのフォルダに移しといて。で、その間に次の仕事に取り掛かっちゃってよ。」

「……はーい。」


 えーっと、で、何々? 何がわからないって?

 ……というか、バージョン管理ができてねぇ!? 俺が保存しといた元データに上書きしやがった。


 はぁ。


 基礎からやり直しの可能性、か。

 目の前がクラッとしやがる。


 はぁー。。。今の新人ってこんなんが当たり前なのか?


 ポチッとな。とりあえず開いてみるか。


 ……あ?

 ここでつまった?

 OK……頭を切り替えていこう。


「山下さん。」

「……はいっ? なんですか?」

「相手からもらったデータに不足があるから、作成ができない、という問題でOK?」

「お、おーけーです。」


 ……なんでそこで詰まるんだよ。


「わかった。そういうときは、その先を作れないか確認して、作れそうなら取り掛かろうか。で、他にも足りない情報がないか確認して俺に報告して。で、もうそろそろ11時だし、俺が内線で聞いてみるから、追加のデータを送ってもらったら、仕上げられる?」

「頑張ります!」

「そんなに気負わなくても大丈夫だから。俺も課長も頼っていいからね? ただ、こっちも動きやすいように、問題が何か、何でもいいから教えてくれると、俺らも動きやすいでしょ?」

「はいっ。」

「我々の仕事は全身を廻る血液のように、他人の仕事が円滑に進めるようにすること、だから。それは俺ら自身にも当てはまるよ。山下さんの仕事が円滑に進むために俺も課長も助けるし、逆に俺や課長の仕事が少なくなるように山下さんも頑張って。」

「はいっ。」

「とりあえず、不足分の洗い出しはこっちでやるから、山下さんはお昼まで次の方を進めといて。」

「わかりました、がんばります。」


 良い上司ってどんなだろう。

 初めての部下が1年も経たずに彼女になって、それ以来、部下らしい部下も持ったことが無いことに気が付いた。

 寺田課長は、まあ良い上司かね。なにせ俺が何をやっていても特に文句もないし。

 まあいいや、取り合えず山下が使い物にならないと俺の業務が滞る。



   *** ***



 昼休みになって、ご飯はどうするのかと山下に尋ねたら「決まってないです。」とか答えた。本社に知り合いもいないようで、しかも雑務課には女性社員は山下の一人だけだ。しかも企画部の他の課の連中とも仲良くしづらい雑務課だ。

 課長と俺だけなら適当なミーティングルームとか、まあ最悪自分のデスクでも良いんだが、そうもいかないだろう。


「かかりちょーは、お弁当ですか??」

「あー、ここ最近はずっと、望月くんは愛妻弁当を持参してるよね。」

「ちょ、俺が結婚してないのは課長だって知ってるじゃないですか。」

「ハハハ、そうだっけ?」


 とぼけおる。


「課長、自分が奥さんから弁当を作ってもらえないからって八つ当たりはひどいですよ。」

「……望月くん、現実は残酷だね。」

「お察しします。」

「むむむ? じゃあこのお弁当は彼女さんですか?」

「そう、だけど。気になる?」

「はいっ、包みから渋めで、どんなヒトなんだろーって思いますよ?」

「それはそうと、山下くんはご飯がないんだっけ?」

「あっ、はい、かちょー。山……下は下に行って買ってきますね!」


 山下はにっこり笑ってから忙しなく買いに行った。


 うーむ、自分のことを名字で呼ぶか。


「あー、望月くん。」

「何ですか?」

「彼女、どう?」

「どうもこうも、苦手なタイプです。」

「……僕もだよ。」


 はぁ。。。

 眺めがいいオシャレなミーティングルームでも抑えるか。



   *** ***





   *** ***



「ごめんなさい! ……生理に、なっちゃいました。」


 俺は、絶望感と気恥ずかしさで死にたくなった。

 結菜に「今夜も楽しませてもらう。」とか言っといて、これだ。

 にもかかわらず、結菜は生理になったことを謝っている。俺がいかに自分勝手かわかるってもんだ。

 俺は寝室でバスタオルを巻いただけの間抜けな恰好だ。


「そ、か。……えーっと、こんなことしてて大丈夫? 家で休んだり、」

「あ、大丈夫です。ボクは軽い方なので、5日か6日間くらい続きますけど、寝込んだりとか無いですから!」

「え、あ、そう?」

「はいっ。……あ、あの、晴彦さんに、指で、気持ち良くして、もらえなくなっちゃいましたけど。。。」


 してもらえなくなった。

 結菜は、どうあっても俺のことを真っ先に考えている。

 そんなちょっとしょんぼりとした結菜が、とととっと俺に近づいて、ぎゅっと抱き着く。


「えいっ♪」


 そのまま結菜が俺を押し倒しにかかるから、俺はそれに従って倒れる。

 俺のことを真っ先に考えてくれる結菜が一体何をしてくれるのか、そんなことを期待した。

 ベッドに押し倒されて、バスタオルが開ける。

 結菜は俺の身体に跨って、いそいそと上がってくる。


「いただいちゃいますね?」


 そ、っと髪の毛を書き上げて、唇を落とした。


「ん……っ。」


 結菜は、何でもかんでも急速に上手くなる。

 驚くほどに、俺をそそる仕種を外さずに、恥じらいを忘れていない。

 襲え、と欲望を煽る方法を知っている。

 俺は結菜の頭を押さえつけて、キスでもっと深く繋がった。


 結菜はキスが好きだ。


 ディープキスをすれば、結菜から俺の口の中に舌を入れてくる。俺は、それを押し返すようなフリをして躱して絡める。

 結菜もそれに応えてもっと、もっととせがむように俺を貪るように自分から頭を押し付ける。まるで、どうしてそれ以上先に進まないのだと、抗議をするような動きだ。

 そういう俺を求めてしまうことを隠せないような仕種は、どうしようもなく俺の自尊心を満たして、そして劣情を掻き立てる。

 ともすれば、このはどこまで俺の言うことを聞くのだろうかと、底意地の悪いことまで思ってしまう。


「んっ……ふう。。。」


 求められて、ぼうっとそんなことを考えていたら、不意に結菜が顔を離した。

 昨日はあれほど我を忘れていたのに、もう自分から顔を離すようになっている。


 とろんとした視線の中に、何か悪戯めいた光があった。


 結菜がすすすっと、俺のハラに座る。

 蠱惑的な瞳は、俺を映しているようで、どこかを眺めている。


 プツ……っと、ブラウスのボタンを一つ外した。


 そのまま、プツプツとブラウスのボタンを外すたびに間から覗く肌の部分が増える。

 結菜はブラウスの裾を引き出す段になって、ようやくリボンが邪魔なことに気が付いた。


 俺は、何を眺めているのかわからなかった。

 結菜が始めたストリップショーは、あまりに暴力的な衝撃をもって俺の脳みそを揺さぶった。

 恥じらいが。

 表情が。

 仕種が。

 吐息が。

 匂いが。

 震えが。

 躊躇いが。

 衣擦れの音が。

 結菜の全部が、俺の脳髄を刺激して、チンコはパンパンに張れて痛いほどだ。


 俺は、結菜の柔肌を見たことがなかった。


 結菜はエロいことするのを嫌がらない。

 なのに、簡単にはその先に進ませてくれない。

 結菜がコントロールする順番で、俺は十分満足させられていた。


 ぷるん……っ、とブラホックを外して解き放たれるおっぱい

 ぱさっと、落ちたブラと、後ろで手を組んで胸を突き出す結菜。

 顔を背けるのは、おっぱいを揉ませることが恥ずかしいからか。

 顔は真っ赤だった。

 上から順に首まで赤に染まって、胸元も真っ赤だった。


 綺麗だった。

 これほど綺麗な裸は、画面でも見たことがなかった。

 均整の取れたプロポーションで、そして完璧な柔肌。

 隙などないのに、どうしてかエロい身体つき。


 これほど綺麗な裸は、見たことがなかった。


 据え膳は食うように。

 俺は結菜のおっぱいを堪能した。


 どう揉んでも結菜は声を上げる。

 だけど、乳首を捻ったりすると、それはより艶めかしくなった。


「んっ、、、あっ。――あんっ♡ 右手は痛くないんですか?」

「あー、もう割りと大丈夫みたい。昨日は急に痛んだだけだよやっぱり。」

「あ♡ きもちーです♡」


 結菜は恥じらいながらも、快感に逆らわない。むしろ、むず痒い程度でも快感だと思うことでエロくなっていく。

 腰つきが、俺のハラの上で躍りくねる下半身が、堪らなくウマそうだ。

 スカートがヒラヒラと動いて、それがチンコを刺激する。大した刺激でもないのに、結菜の女の強い香りと、それで考えてしまう淫らな妄想が、ガチガチのチンコからダラダラと我慢汁を溢れさせる。


 そして、それを結菜は喜んで舐めるのだろうと思うと、堪らない。


「ひゃっ――あっ♡ 晴彦さんっ♡ それきもち♡ いいっ♡」


 ズルッ……と、汗ばんだ結菜が躍る拍子に手が滑る。

 それを合図とばかりに、結菜は俺に覆いかぶさった。


 これは! ぱふぱふだっ!!


 おおおおおお!!

 ぱふぱふだ!

 ぱふぱふだぞ!


「ちゅっ――コリッ。」


 だから堪らずむしゃぶりついたのもしょうがないと思う。


「イひゃあっ!!??」


 結菜がぶるっと震えた。


「あ、あ、あ♡ あ♡ あ♡ あ♡ あんっ♡」

「ちゅ、ぺろ、あむ。」

「ぁあああああもうっ♡ もおっ♡ はるひこさん可愛すぎですようっ♡♡」


 結菜がバグったから、乳首を噛んでみる。


「もうダメですっ♡」


 結菜が逃げるから、追いかける。


「あんっ♡♡ もー♡ もおっ♡ 晴彦さんっ♡ あっ♡ おっぱい、おいしい??」

「ちゅ、あむ。」

「ああうぅーっ♡ 晴彦さんかわいいよぉ♡ ボクのおっぱいはぁ♡ あんっ♡ 晴彦さんだけのものだからっ♡」


 知ってる。

 だから、遠慮なく堪能させてもらう。

 結菜の顔は蕩けきって、恥じらいも見えるのに、それ以上に何かが溢れ出ていた。

 めちゃくちゃデレデレしていた。


 結菜はおっぱいを押し付けてみたり、離してみたりして、それはそれで楽しんでいるようだった。

 おっぱいに溺れるなんて、初めてだった。

 揉み拉いたせいか、おっぱいまで真っ赤になった。

 そして、唾液とか汗とかでベチャベチャだ。


 不意に結菜が体を起こす。

 まるで結菜が満足したみたいに上気した顔。

 俺は、次に結菜は何をしてくれるのだろうと思って、何もしない。


 そういえば、俺から無理やりフェラさせたことってあったか? そんなことしなくても、結菜が来る日は大体搾り取られている、か。


 結菜はベッドから降りて、俺の股の間に陣取って、そして俺の赤く腫れたチンコをじっと見る。


「今日はよろしくお願いしますね? おっきな晴彦さん。ボク、希埼 結菜っていいます。これからいっぱいご奉仕しますね。」


 そう言って、パクリと飲み込んだ。

 うおっ!!

 上手すぎるだろ!

 すぐイくところだった。あぶねえ!


 とかなんとか思ってると、飲み込んだチンコを出して、なんと俺のチンコに話しかけ始めた。


「知ってます? 晴彦さんっておっぱいが好きなんですよ?」


 チンコをじっと見て、そして俺を一瞬見つめてまたチンコに話しかける。


「おっきな晴彦さんはどうですか? おっぱいはおっきな方がいいですか? え? やだぁ♡ どっちでも好き、、、なんて♡ でも、おっきいとこんなこともできるんですよ?」


 ぐちゅ♡


 あろうことか、おっぱいチンコを挟み込んだ。

 パイズリだった。


「どうですか? いつもと違うでしょう? 気持ちいいですか? じゃあこれから舐めていきますね?」


 そして、なんと突き出た先っぽを咥えた。

 パイズリフェラだった。


 ず……ずりゅっ。


 結菜はおっぱいに顔をつけて、身体を上下に動かし始めた。

 動かしづらいのが滑りが悪いからのか、ぐしゅぐしゅと唾液を垂らし始める。

 そして、咥えてからずっと、結菜は俺の顔を上目遣いで見つめている。


 ああ、それ、いい。

 結菜が動き始めて、すぐにポイントを押さえて気持ち良くしてくれているのに気付く。

 パイズリフェラなんてロマンだけかと思えばそうでもなかった。

 これは、いいな。


「はあっ、はあっ、はあっ。」


 結菜は身体を丸ごと動かして、俺の上でバウンドする。

 その衝撃がまるで騎乗位のようで、それ以上に気持ちがいいのは口が上手すぎるからか。

 とにかく、俺はすごい速度で達しそうになっている。

 ああ。


「あっ、あっ、っく。――う、ううっ。結菜……っ。」


 ちゅぷっ♡

 気持ち良すぎて名前を呼んでしまった。

 結菜とまっすぐ視線が交差する。

 あ、間に合わね。


「なn」

「――でる。」


 ビクンッ! ドクッ、ドクドクドク。


「え、ぁわっ――ひゃっ、わっ、わっ、わーっ♡」


 あ、あー。やっちまった。

 顔に、かけちまった。

 もったいねー。飲ませたかった。

 結菜のパイズリフェラで興奮したからか、結菜に鍛えられたからか、AVの汁男優みたいにドクドクと大量の精液が飛び出す。

 そのひと筋ごとに、結菜の顔面が、穢されていく。


 けど、エロい顔だな。


 これ全部、俺の精子なんだよな。


「あ、ああ……。」

「えへへ、ごめんなさい。」


 とかなんとか言いながら、顔についた精液も一旦おっぱいに落として、そしてズルズルと飲み下す。

 あ、何だこのエロさ。

 顔射もいいな。


「……別に、謝らなくても。」

「だって、晴彦さん、ボクに飲ませたがるでしょ? さすがにボクもわかるよ。だから、口で受けることが出来なくてゴメンなさい。」

「ああ、そう。」


 今さっき、どっちでもよくなった。一旦顔にかけて、そして集めてもう一回飲ませるのもいいな。

 口に溜めさせて、そして叱るフリして喉の奥にチンコで押し込むのも凌辱的だ。

 ああ、結菜はどうしてか汚したくなる。穢したくなる。

 何をやっても穢れないんだろうなって思うから、逆に何をしてもいいような気にさせられる。


「だから、晴彦さん♡ ボクの口の、咽の奥まで犯しませんか?? きっと気持ちいいですよ♡ 晴彦さんも、精子を受け止められなかったボクにお仕置きが必要だって思いませんか??」


 しかも結菜自身がこんなことを言うんだ。

 俺にどうしろと?


 このあと、めちゃくちゃフェラチオするしかないだろう?









~to be continued~