〜分析結果サンプル〜
「あの子は、早い内にちゃんと振って、諦めさせなさいよ? ……それに、アンタまさかあんな幼気な子に手を出したりしてないだろうね?」
もう手どころか、口の中に出しちまったよチクショウ。
俺は、母さんに言われたことがショックで愚にも付かないことを思っちまった。
「……なんでだ?」
喉は急速に嗄れてカサカサした声が出る。それを咳ばらいで整えた。
俺は、母さんに聞き返すことが精一杯だった。
「なんで、って。……ハァ、わかんないかい?」
「わからんよ。」
母さんはヤレヤレと首を振ってるが、不出来な息子で悪かったな。
「アンタの幸せを考えたら、私がこういうのも当たり前じゃないか。」
――は?
俺の、幸せ?
「……あのねぇ? 結菜さんはまだ若いんだ。可能性だらけじゃないか。」
「ああ。」
「そんな子が、一週間そこらでもアンタみたいな馬鹿に構ってることが奇跡なのはわかるだろう?」
酷い言われようだが、俺もそう思ってたから言い返せない。
「女はねぇ、ハッキリ2種類に分かれるんだよ。束縛されて嬉しくなるのと、嫌がるのと。」
「ああ。」
「結菜さんは、間違いなく束縛されたい方だね。」
「そうなのか。」
なんとなく、そんな気はしていたが。
「そうなのか、じゃないよ! アンタが甲斐性無しだから結菜さんは悲しんでるんじゃないか!」
「え。」
そんなふうには見えなかった。
「何を惚けているんだい。束縛してほしいのに、肝心の相手がこんな為体だから、そのうち結菜さんの心は疲れちまうだろうさって話だよっ。そしたら、アンタと付き合ってる苦痛から解放されたいって思って、一人で泣くに決まってる。好きなのに、別れないといけないと決心させることほど相手を傷付ける仕打ちもないさ。」
母さんは矢継ぎ早に捲し立てる。
「わかるかい? あの子は若いから、アンタが甲斐性無しのままで、あの子の心が疲れちまって別れることになっても、いつか立ち直れるだろうさ。…このままじゃ、自然にそうなるまで半年か、それ以上かね。結菜さんはずいぶんとアンタに惚れちまってるから、もしかしたらもっと先かもしれない。
なら、アンタがそのままなら早く別れてあげることの方が結菜さんのためでもあるんだよ。……それに、あんな別嬪さんに好かれるような何かがアンタにあるなら、他にも誰か好い人が見つかるかもしれないじゃないか。結菜さんはいい子だけど、アンタが甲斐性無しの馬鹿のままならそのうち息が詰まるよ、きっと。」
はぁ、と母さんは一息吐いた。
「だから、アンタの幸せも結菜さんの不幸も考えたら、アンタが早いとこ別れを切り出すのが一番いいのさ。アンタもいい大人だから私ももう何度も言わないけど、よく考えるんだね。」
やれやれ、お風呂に先に入らせてもらうよ、と母さんは向かった。
衝撃だった。
俺が認めたくないだなんだと、ごねている間にそんなことになっていた。
ぐうの音も出ないほどの正論だった。
俺が薄々わかっていたことを、ハッキリ言われただけだった。
それだけ見ててもどかしいんだろう。客観的に見てわかるほど、俺がポンコツに振る舞っているんだろう。
そんな気はなかったなんて、冗談じゃねぇや。結菜が俺を安心させるために言わないって言った言葉じゃねぇか。
クソ。
クソが。
みっともねえったらありゃしねえ。
*** ***
「やあ、お早うさん。」
最低の寝覚めだった。
結菜が起こしてくれるから、目覚ましをかけてなかった。それ以上に、結菜が起こしてくれなかったことがこんなに寝覚を悪くさせるものかと、ビックリした。
「ああ、もう昼か。」
「そうだね。何を食べたいんだい?」
「なんでもいい。」
それが一番困るんだけどね。だなんて言いながら、よっこらせと腰をあげて母さんはキッチンに向かう。
何かを濯ぐ音がした。母さんのことだからまだ冷し中華とかそんなものを出すんだろう。
「なんだい、じっと見てきて気持ち悪いね。昨日の男前が台無しじゃないか。甲斐性無しの馬鹿だったところに不細工までくっついたら目も当てらんないよ。」
散々な言われようだった。
「ハァ、すっかり張り合いも無くなっちまって。……アンタ、少しはまともになったと思ったらこれだよ。」
「……?」
「わかんないかい? アンタ、最後に会ったの、5年も前だよ。」
「え?」
そんなに、か?
「何を呆けちまって。……アンタが優子さんと別れて、そのあと5年前に久し振りにこっちに顔出したと思ったら、まるで死人かと思っちまったさ、縁起でもないね。正月だったってのにね。」
「そんなに経ってたのか。」
優子は、俺の元カノだった。ちょうど5年前っていったらどん底に落ちて2年も経たないくらいの頃か。
ああ。そりゃ、死人みたいと言われても仕方ねぇ頃だな。
今でこそこんな状況に慣れちまったが、その頃はまだギリギリ挽回出来るんじゃないかって無駄に足掻いてた頃だな。
「そうだよ。……昨日、ここを訪ねたら結菜さんが出てきて心臓が飛び出るかと思ったさ。でもねぇ、そのあとちょっとはマシになったアンタの顔を見たから、少しホッとしちまってさ。それが結菜さんのお陰だってなら、もっと感謝しないといけないなと思っても、手前味噌のハズがこんなだろ? 私ゃ頭抱えたかったさ。」
「そいつは悪かったな。」
マズイ手前味噌で。自慢にもならなくって。
「ともかく、この話はおしまい。私ゃ、あんな器量の好い子の相手がアンタじゃ可哀相だから、アンタがどうにかしろって思ってるからね。」
「……わかってるよ。」
一晩考えて、結論は出なかった。
どうにもならなかった。
信じられるか否か。
そんなもの一朝一夕に決められるものじゃないからだ。
だが、結菜が欲しいならその瞬間、俺は信じる方に舵を切ることになる。
*** ***
俺は、昼から明かりを切ったままの暗い部屋で一人考えていた。
瞑想に近かった。
直視してこなかった問題を整理する。
結菜を信じるか否か。
結菜を欲するか否か。
俺は変わるのか否か。
芸能人が交際1ヶ月で結婚したという記事を読んでみた。コイツらは、一体何を基準にそんなことが出来たんだ?
元ドラマの共演者?
似たような生活圏?
翻って俺。
そもそも俺みたいな歳だと交際は、結婚を視野に入れる。結菜の歳じゃ、付き合っても本気で結婚は視野に入らない。
だから、俺が結菜と付き合っていくなら、結菜に結婚を意識させないといけない、、、のか?
いい大人なら、年上に憧れるJKに大人な対応をして、お互い楽しむとか、そういう付き合い方をするべきじゃないか?
考えが堂々巡りに入って、俺一人で答えを出せる気がしない。
ああ、クソ。
――ピンポーン。
あ、結菜。
居ても立ってもいられず、俺は結菜を出迎える。
「いらっしゃい。」
そこに、天使がいた。
頭の天辺から爪先まで俺好みの、グチャグチャに犯したくなる清楚な印象の結菜。
「はい、晴彦さんっ。」
それがニッコリ微笑むのは俺だけだと思うと自惚れそうになる。
だというのに、頭が冷めたまま温まらない。
「もしかして、お義母さんは帰りました?」
「……ああ。」
部屋の中も暗いからな。
じっと見詰めていると、少し慌てながら結菜は玄関を上がる。
「ご、ごはんの用意をしますね?」
「ああ。」
そうか、あれだ。
昔から俺は考え事をすると怖い顔になると言われている。
俺は、ぐるぐるしたままの頭が、顔を強張らせるのをどうにもできないから、少しでもそんな顔を結菜に見せたくなくて素っ気なくしてしまう。
感じ悪いな。
結菜が一生懸命ご飯を用意してくれるってのに、俺はリビングで背を向けたままだ。
そんな対応の所為だろう。
いただきますからごちそうさままでずっと、言葉も少ない夕食だった。
俺の所為だとわかっているから、なおさら嫌気が差すというのに俺は、逃げるように風呂に入ってくるなんて言ってこの場から逃げてしまった。
「あ、はいっ。ボクは洗い物をしていますね。」
なのに、結菜はいつもみたいに、いつもより明るかった。まるで、その分だけ暗い俺を照らすような笑顔だった。
そういう笑顔こそ、壊したくなる。
俺はお前が言うような優しい男でも素敵な男でもない。割りとロクデナシだし、なにより、その純真な笑顔を見る最後の男になりたいなんて黒い感情がある。
母さんが焚いた風呂は、いつもより温かった。
それで気付いた。結菜は、俺が風呂は熱い方が好きだといつから気付いてた?
だが、きっと結菜のことだ、最初は熱い方で焚いておいて、俺の好みの温度も探ったりしたんだろう。
気が利くなあ。
ああ、風呂が温いから、上がってすぐに着替えちまう。
「麦茶です。」
「ありがとう。」
結菜は変わらず俺に麦茶を持ってくる。
「10月なのに、まだまだ暑いですね。」
「ああ。」
「やっぱり、暑い方が疲れも溜まりやすいんですか?」
「……そう、だなぁ。」
温い風呂だったが、風呂上がりの一杯は美味かった。
俺は、結菜をどうしたい?
考えがまとまらず、俺はリビングのソファに座る。ここが、一番落ち着いて考えられるような気がした。
「晴彦さん。ちょっと、疲れてます?」
心配そうな結菜の顔。
俺を追ってリビングに来て、俺を覗き込む。
その瞳に、落ちそうになる。
「……? どうして?」
「だって、なんだか疲れてるように見えますよ? もしかして、ボクとかお義母さんとかが週末にずっといたから、疲れが取れなかったりしました?」
いや、そんなことは。と答えるより早く、結菜は離れてしまう。
ゾクッとした。
母さんに言われた言葉が咽に引っ掛かった魚の小骨のように、俺を苛んだ。
結菜は俺と母さんがゆっくり過ごせるようにか、気を遣って俺の前からフッと行ってしまう。
どっちにも、怒りを覚えるほどに嫌だった。
俺は、いつからだ? 結菜を取り零したくなくなったのは。
単純な話だった。すでに俺は、結菜にそばにいろと、いつでもそばにいて欲しいと思うほどには、結菜に嵌っていた。
信じて裏切られたらもう立ち直れないぞ、だなんて信じないようにしたかったんじゃない。
すでに信じてしまったことをどうにか誤魔化して、立ち直るための準備をしていたみたいだ。
それも全部台無しだ。
背中を向けた結菜が一歩進んだだけで、俺は絶望感を募らせている。
ダメだ。
ダメだ行くな。
行くな結菜。
「行くな。」
俺は、気付いたら手を掴んで引っ張っていた。
「えっ?」
間抜けな声と、振り向いた間抜けな顔。
それが怖ろしいほど整っていて、なのに暖かい印象だ。
ああ。
今、俺は初めて結菜の顔をちゃんと、真正面から見ている気がする。
俺好みの美少女だとは思っていた。
だが、こんなにも俺好みの美少女だとは、思っていなかった。
大きな目がいっぱいに開かれていく。垂れ目でもツリ目でもないアーモンド型の目に、濡れた瞳。タップリの睫毛。スッと一筋で整った眉毛。小さな鼻とちょっと厚めのプルプルした唇。耳から顎までの絶妙なアウトライン。ハッキリしたEライン。そして小顔。健康的なのに儚い印象の透き通ってモチモチな白い肌。豊かな髪の毛は、烏の濡れ羽色でロング。細くしなやかで、軽やかに揺れる。なのに汗で湿ったように、しっとりとしている。
そんな結菜はされるがままに、刹那の間に眼前に迫る。
ああ、そうか。
こんな簡単なことが、わからなかったか。
俺は、結局のところ小さな人間だ。
結菜に見捨てられるのが怖いんじゃない。
それで惨めになるのが我慢ならなかったんだ。
卑屈になっても、他人を見下せるなら舐められたって構わなかった。
安全な場所で、いつかざまあ見ろと言えるかもしれない瞬間のために、縮こまっていた。
結菜は俺のパーソナルスペースに、いつの間にかいた。
それをすんなり受け入れてしまっているほど、俺が穴だらけで間抜けだと思いたくなかった。
だから、俺からはこれ以上関係を進める気なんてなかった。
なあ、結菜。
お前は、どこまで俺の言いなりになれるんだ?
結菜の、全部を犯すことに決めた。
嫌がられても離さないことにしよう。
結菜は俺のものだ。
まずは唇を貪ることにする。
折れて動かしづらい右腕じゃ、近付いてくる結菜を支えられない。けどまあいいか。俺も結菜も身体にクッションは多い方だ。それでどうにかなるだろう。
――むにっ、ゴチっ。
痛ってえ。だがまあ、そんなことより結菜を逃がさないよう抱きしめる。
「□☆〇△×~~っっっっ!!??」
結菜は何が起こってるかわかってないような、ようやくわかったような顔だった。
俺は、ああ、満たされていく。
やっぱり結菜を手放す選択肢は無いな。
結菜は一瞬震えて、身体は強張って、なのにすぐに俺に全身を預けてくる。身体が硬いのは熟れてないからだ。擦れてないからだ。
それがいい。
俺が、間違った常識を教え込んでもわからないってことだろ?
三十路から四十路にかかる交差点を曲がった辺りの俺だ。世間のおっさんたちほどにはネチネチしてくる年齢だ。
自分の快感の他に、女の反応と嬌声が耳朶に染みるようになった。
「んゅ……。」
この、鈴を転がしたような幼い声を、悦びで歪ませたい。
結菜は慌ただしい。全身の毛穴が開いたんじゃないかってくらいの雰囲気があって、ガチガチに強張って、そして無理矢理弛緩する。
そしてまたビックリするといった忙しさだ。
可愛いな。
「んっ。」
結菜が居心地悪そうに身動ぎをする。ちょっと強く抱きしめすぎたか?
「――ちゅ、あ。悪、」
「んゅううっ。」
一瞬離れて、結菜からのキス。
気持ちが先行するせいで拙いが、だから俺がファーストキスを奪ったという征服感に満たされる。
それで終わらないのが結菜だ。
結菜の先行した気持ちは、溢れて俺に襲い掛かってきた。
俺の両腿に跨るように密着してるのを、知ってか知らずか、結菜はおっぱいが潰れるのも厭わずに貪っていたハズの俺の唇を、さらに貪り返してくる。
「んむ……、あむ。ちゅう。」
一生懸命に啄んでくる姿が初々しいが、結菜の熱量は俺に懐いて勢いよく迫りくるゴールデン・レトリバーに似て、御し難い。
それが尻尾を振って欲しがるから、こっちはその質量にアタフタしてしまう。
しかも、実際は発情期。さしずめ、盛りの付いた雌犬ってところか。
結菜が、すでに前後不覚なほどキスに没頭していくから反対に、俺は冷静になっていく。
冷静になったところで対処のしようがないから、ここからやり返すことなんて出来ない。
俺は、絹のように滑らかなフトモモや、肉欲的な身体の重み、結菜の熱量をごちゃ混ぜに感じていた。
フトモモはキスの攻撃のたびに俺の両脚を締め付ける。つられて下腹部の辺りが俺の腹に押し付けられる。胸板で押しつぶされたおっぱいの弾力がマシュマロのようだと錯覚して、両頬を抑え込む小さな手の平と繊細な指の忙しなさを知る。
そして、溺れそうなほど貪るように押し付けられた唇と、為す術なく迷走する小さくて柔らかい舌を堪能する。
きっと、今、俺の左手が結菜のお尻を鷲掴みにして揉み拉いているのもわかってないだろう。
張りのある柔らかな肉に沈む指先の感触は、結菜が極上の肉体だということを証明している。
「あむっ、んんっ、ふあっ、あふっ。んっ。んんぅ。」
今、結菜にはキスをする唇がこの世のすべてなのだろう。
だが、すでに俺はその先を期待して、そして望んでいる。
「はぅっ、あふっ、ん。ちゅっぷ。」
「んっ、ふっ。んくっ――お、落ち着けっ。」
離そうとすれば、なお追いすがるように、おもちゃを取り上げられた子供のような寂しい視線が濡れているから、ドキリとする。
俺は、なんて酷いことをしたのだろうか、と。
興奮する。
「んーっ!」
「待て、落ち着け、結菜っ!」
それはやはり、発情期の雌犬を躾けるような叱り方に似ている。
一喝で、目が覚めたかのような表情になる。
さっきまで、あれだけしどけない顔をしていた女だとは思えないほど、稚い様子。
そのギャップに、打ちのめされる。
そして歪めたくなる。
結菜が女の表情をするように、教え込ませたくなる。
「は、い。」
「……落ち着いたか。」
「はい……、ごめんなさい。」
「いや、悪くない。悪くないが、少し、驚いた。」
「そうですか?」
「ああ、あんな顔に、なるんだな。」
「ど、んな顔でした?」
エロい顔、で通じないのはわかってる。
こういう時は自分の率直な感想と、例えを挙げるのがいい。
「なんか、女だった。。。」
「え?」
「目の中にハートマークが浮かんでるかと思った。」
ただ、この表現は少し気恥ずかしい。目の中にエロいハートマークが浮かんでるなんて、エロ漫画を読んでると告白するような気分だ。しかも割とヒロインが主人公を深く愛する系の。
そう思えば、結菜も割りとそっちの気があるような。
「俺は、結菜に、そんなに求められるような、男じゃないぞ?」
十把一絡げの有象無象だ。
ああ、結菜を手放さないのは決めたとしても、まだまだ俺は俺を許せそうにない。
昔の、イケイケだった20代の頃と比べると向上心も無く、薄っぺらな存在になっているんだろう。
そこら辺にいるオッサンの一人に過ぎない。
結菜と対比すればするほど、俺という存在はちっぽけになっていく。
そんなことを、口が滑って勝手に喚いていた。
言い訳がましいその言葉の数々に、俺は自分でも理解が追い付いていなかったことを知った。
四十にして不惑と言うが、俺の足元はだいぶぐらついていているようだ。
36歳にして、新鮮な感情を覚える。
「ねえねえ。――は……るひこさぁん……っ。」
ああ。
この顔だ。
結菜には、俺しか見えていない。
この感情を何と表現するか。
俺は、ただただ愛されている。
「きて。……ボクを、ここで食べて。助けて。ボク、暑いよ。晴彦さんがほしい。欲しいの♡ どうしたら治まるかわからないの♡ 晴彦さんっ♡」
その熱量に、圧倒される。
次を、その先を、結菜は急かしている。
ぐちゅっ。
「ああっ……つっ。」
思わず声が漏れた。
結菜のトロトロに溶けたマンコが、勃起して張り詰めたズボンの先端に触れて、押し込んだ。
挿入ったかと錯覚した。
そんな童貞みたいな妄想をするくらい、刺激が脳に直結していた。
結菜の処女を破る期待、妄想、興奮が、すでにピーク付近に達しかけている。
結菜は、焦らすのが上手い。それもすべて天然で。
この前も、スカートを捲る仕種は凄かった。
今日はそれ以上だ。
結菜は、自分がどうすれば雄をヤル気にさせるか知っているようだ。
マンコを押し付けて、そしてズラした。
結菜は欲しがった顔のまま、俺の首に手をかけて後ろに倒れていく。
これを追いかけろと言うように。
そのまま上から突き破れと言うように。
激しいのが望みなら、乗るしかない。
俺は、犯す方が好みだからだ。
そして潤んだ瞳から視線を外せない。
俺は、慌てて結菜が床にぶつからないよう、左手をクッションにする。
するとどうだ。ギプスが巻かれた不器用な右手じゃ上手く体を支えられそうにないし、よしんば支えられたとして治りかけの敏感な腕だ。骨がぶつかる衝撃は、俺の体重が乗ってるからおそらく骨折の時のそれに匹敵するかもしれない。
一方で、結菜は俺に跨っていたから、俺が絨毯に膝をつく頃には、俺のでかい腰が結菜の下半身を押さえつけると同時に足を開かせていく。俺が、結菜の股間に割り込んで入っていく征服感。
勃起したチンコの先端がまた、布越しに結菜のマンコに突き刺さる。
結菜は、その感触に震えている。期待して、そして悦んでいた。
ああ、チクショウ。
出来れば俺にもっと痛みへの耐性があればいいのにと、先に後悔が立ったのは初めてだ。
右足のギプスが重く鈍い音を立てる。続けて右手が絨毯に――
「~~~~~~~~っっっっっっっっ!!!!!!!!」
ぐうぅっ!!
「――うぐっ。」
クソッ、声が、漏れた。
刹那、結菜の顔が驚愕に染まって、そして気が付いて、懺悔をするような悲壮感に包まれる。
「ああのあの晴彦さん腕が骨折した手で支えるから振り返しちゃったんですよねごめんなさいっ戻ってください大丈夫ですかううーっ!」
倒れ込んだ俺は、結菜の反動を使った押し返しでソファに逆戻りだった。
さっきまで蕩けていた結菜は、もういない。
「ごめんなさいっ。痛いですよね? 氷とか持ってきた方がいいですか?」
「大丈夫だ。」
「でも。」
「いや、一瞬だけで、もう痛みも引いたよ。多分、治りかけのところに衝撃を与えたから敏感なところに響いたんだろう。」
「そう、ですか?」
心配そうな結菜に対して、俺が右手を握っているのは別の後悔の所為だ。
「……もし、痛みがバレなかったら。」
「え?」
「どうなっていた?」
口から洩れたのは、愚問だった。
あまりに愚かすぎて、自分が嫌になる。
結菜を直視できない。
「……美味しく食べて、くれましたか?」
っぐ。
だからか、俺は悔しさで愚問に愚問を重ねてしまった。
「今は?」
「治るまでお預けです。」
結菜ならそうするだろう。
絨毯で押し倒されるために、俺を誘ったのは結菜だ。
ベッドまで我慢できず、自分から受け入れるのではなく俺に犯されるのを望んだのは、結菜だ。
それで俺の怪我が悪化するほど自分を見失ったことに、頑固な結菜は恐ろしいほどの罪悪感と、後悔の念を抱いているだろう。
だから、安全マージンを十分にとって、暴走しないようにコントロールするんじゃないか。
そんな先に立った後悔が、見事に的中しやがった。
……しなくていいのにな。
「――だからだよ。」
最悪、今日もフェラ止まりの可能性すらありうる。
はぁ。。。
あーあ。やってらんないよ。
「ねぇ、、、晴彦さん。」
「ん?」
ん?
なんだろう、この甘ったるい声は。
下を向いた俺の視界に、白く透明な結菜のあられもないフトモモが見える。
え……っ?
驚いて向いた眼前に、目を閉じて迫る結菜の顔。
「ん……っ」
確実にさっきより上手になったディープキスだった。
驚いて反応が遅れた俺の口腔内を蹂躙する。
「ちゅっぷ……はあ、はぁ♡ ねえ、晴彦さん……ボクも、ボクも我慢なんて出来なくなっちゃった♡ だけど、お預けだから。こうするしかないの♡」
そう言って下を見た結菜につられて見れば、俺の太腿の上には当然、俺の左手があった。
結菜は軽く腰をくねらせて、ワンピースの弛みをとって狙いやすくした。
その動きはエロい。
ん? 狙いやすくした?
ぐちゅ。
うおっ、熱……っ!
え、え?
結菜、の、マンコ?
さっきの腰の動きが俺の手の平の上で起こる。
「ひあっ♡」
結菜のそんな声、初めて聴いた。
「ボクを、晴彦さんの手で、イかせて欲しいのっ♡♡♡ お願いします♡♡ 何でもします♡♡ このあといっぱいフェラチオします♡♡」
俺はまた、結菜の手の平に頬を包まれて、真っすぐ見つめ合う。
「こんなボクを許してください、晴彦さんの指が欲しいの♡ ぐちゃぐちゃにかき混ぜてほしいの♡」
潤んだ瞳が潤み過ぎて、下瞼の堰が決壊する。
涙が一筋、頬を伝う。
絵になるほど、艶やかだった。
「イかせて、、、ほしいの……っ♡♡♡」
ここまでお膳立てされて、食べない選択肢はない。
惜しむらくは、恐らく試食で終わりそうだということくらいか。
ただまあ試食とはいえ、俺は一口で終わらせる気なんて更々ないぞ?
それに俺は犯してほしいと思ってる結菜のおねだりに乗っかって、優しくなんてしない。
思うが早いか、早速パンツをずらして中指で結菜の膣内に侵入する。
「ィぎっ――、あっ。ん、んんぅ♡」
膣内は、熱くて蜜が溢れ、ドロドロで締め付けてくる。
俺の利き手は右手だから、左手だとかき混ぜるには乱暴すぎる。ざらざらした指が膣内を撫でる1ミリ毎に結菜の背中は震えていく。
キスしていられないほどの、何か、快感か痛みかわからない強烈な刺激なのだろう。
「気持ちいいか?」
だから、この刺激は快感だと調教する。耳許で囁けば、そこも性器になったかのようなこそばゆさを感じたのか、頭を反対に引っ込めようとして肩が上がっている。
ぐぷっ。
「っ――かはっ♡」
指が、根元まで埋まった。指先はコリコリと弾力のある部分に触れる。
俺の勃起したチンコは結菜が蠢かすフトモモにランダムに刺激されて、怒張を保たされている。
「今、どこに触れてるかわかるか?」
普通、初めての女が膣内の感触を覚えているわけがない。
使い込まれて、教え込まされる内に、どの感触が、どの部分を触れたからか、身体に覚えこまされる。
なのに結菜は、そこがどこなのか、わかっているような困った蕩けた顔で、意地悪な俺を責めるような表情だが、そそられる。
そんな顔をされたら、虐めるしかないじゃないか。
俺はニヤニヤしながら、結菜の顔をじっと見つめ、極力手を動かさないように努めた。
「どこだ? 結菜?」
結菜は、いやいやと首を振り、なぜ動かしてくれないのかと責めるように腰をくねらせる。だが、それじゃあ思ったような快感は得られないのか、すぐに諦めて俺をじっと見つめた。
そして、目を伏せた。
仕方ない、もう一度だけ刺激してやろうじゃないか。
サービスだ。
「――ひあっ♡」
「どこだ?」
それで諦めたらしい。
「……し、子宮の入り口、です。」
「詳しいんだな。」
合ってたからご褒美を上げないといけない。
仕方ないから少しだけグリグリしてやる。すると面白いように身体を震わせて、撫でるタイミングで嬌声を上げる。
「結菜、なんで初めてなのにこんな深いところが気持ちいいんだ?」
さっき諦めたからか、結菜はすんなりと答える。
「ひっ♡ わ、からないよぅ♡ あっ、ん♡」
「自分で弄ってるからじゃないか?」
「違います違いますよぅ! ボクは晴彦さ、ゃあんっ♡ がっ、触れてないとこっ、は、触らないもん♡」
「気持ちいいなら気持ちいいと言え。」
「気持ちっ♡ いいですっ♡ 気持ちいいよっ♡ あ゛ーっ♡ 気持ちいいよ♡」
「ホントに初めてか?」
「初めてです♡ きもち♡ あっ、やっ♡」
もう結菜は汗でベトベトだ。
なのにさらに女の香りを強くするだけで、それは俺のチンコをガチガチに固めていくだけで、不快な匂いじゃない。
それよりも、子宮口を撫でただけでこれだけ鳴くなら、他の部分はどうなるのだろうか。
「おい。」
「はいっ♡」
「腰を上げろ。やりづらい。」
「ごめんなさいっ♡」
ぐちゅ、ぬぷぷ。
結菜のマンコは指を飲み込もうと蠢くのに、結菜が脚をプルプルと震わせて引き抜くから卑猥な音を立てる。
ちょうど親指にクリトリスが引っ掛かる位置までゆっくり引き抜くから、弾いてやった。
「ああんっ♡♡♡」
ぐぶっ♡
結菜は腰が抜けたように落ちて、また指を膣内に嵌めていく。
「何やってんだ?」
「だ、だってぇ♡」
口答えか?
と見つめるとプルプル震える。
「ん♡ んんぅ♡」
結菜はもう一度、脚に力を入れ始める。
今度こそ、第二関節まで抜けたから、Gスポットを撫でてやった。
「 hhhhhhhhhhaaaあああああああっっっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
ぐちゃ♡
すとんと腰が落ちて、奥まで咥えこんで、奥にぶつかって、また背中をビクッと震わせる。
結菜は、遠くから降るような喘ぎ声をあげて、それが煩くない。
というか、今のひと撫でであっさりイキやがった。
ビクンビクンと心ここにあらずで、俺の肩に顔を埋めている。
「――はっ♡ あ、あ。あ♡」
そして、キョロキョロと周りを見て、俺を見つけてふにゃっと笑った。
「何をしたんです? 晴彦さんっ♡」
「Gスポットだよ。」
「Gスポット?」
「結菜をひと撫でで天国に連れてった膣内の快感ポイントだよ。」
「反則ですっ♡」
「ダメか?」
「壊れるまでしてください♡」
「じゃあ、もう一度腰を上げろよ? そして、今度はイッても腰を落とすなよ? 壊れるまでして欲しいんだろ?」
「頑張りますね♡」
言って、結菜は首に腕を回して顔を俺の首筋に埋めた。
そのままクンクンと匂いを嗅ぎながら、何を堪能してるのか「ああっ♡」と恍惚の声を上げている。
俺はお望み通り、Gスポットとそしてクリトリスを両方同時に刺激する。
中指と親指で肉を掴む要領だ。
恥丘を挟んで、Gスポットもクリトリスもグリグリと潰すように刺激する。
明らかに、強すぎる刺激だった。
なのに結菜はそれをすべて快感に変えられるらしい。
さっきのような声にならない吐息を出して、遠くからやってくる喘ぎ声につながる。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
腰をくねらせ、身体を震わせ、俺の首に吸い付き、爪を立てて、脚を突っ張るから身体が俺に押し付けられて、ソファのその後ろに押し倒したいかのようだった。
結菜は、何度も何度もイッたが、言いつけ通り何度も頑張って腰を浮かせたまま踏ん張った。
本当にひと撫でふた撫でで、面白いように絶頂に至る。
一度イッて、余裕がないところをまた責める。
止めてと一瞬言いかけるから、言わせない。
今週搾り取られた仕返しをするように、何度も何度も何度も何度も何度も何度もイかせ続ける。
しかし結局、最後が訪れる。
何度もイカせている内に、腰をガクガクと震わせて、腕も力が弱くなり、身体を持ち上げるたびにおっぱいがグニグニと押しつけられて、でもフッと力が抜けた。
ごぷっ♡
「あh――♡」
結菜は小刻みにビクンビクンと震えるだけの雌犬になった。
「ハァー♡ ハァー♡ ハァー♡」
呼吸は浅く、おっぱいが上下する。髪の毛が張り付いている。
フェロモンが充満する。
ズボンの左腿が冷たい。
結菜の背中を支える右手が重さを感じだす。
結菜はまだ足りないのか、わかっていないのか、浅い息を吐きながらプルプルと腰を持ち上げて、出来ずに落ちる。
ぐちゅ♡
そしてまた、ビクンビクンと絶頂する。
むしろ、それが目的なんじゃないか?
この雌犬は、俺の命令に従うフリして勝手にイキたいだけじゃないか?
「もういい。」
「も、いいの?」
焦点の合ってない目でぼんやりと俺を見つめて、浮かしかけた腰を落とした。
ぐっ♡
そんな些細な刺激さえ、結菜は耐えられず、顔を快感に歪める。
ここまでかき混ぜれば、もう判断なんて出来なくなってるかもしれない。
俺はそんな淡い期待をした。
「もういいから、自分で引き抜け。」
「はぁいっ♡」
ぐぷぷ♡
結菜はゆっくりと腰を上げる。愛液と空気が混ざる卑猥な音が響く。
やっと中指がすべて出てきたところで、俺はズボンをずらして張り詰めたチンコを外に出してやった。
我慢汁で、てらてらと濡れていた。
何もわかってなさそうな結菜の腰に左手を添えて、ズラす。
あとは、ゆっくり腰を落とさせて、微調整して一気に突き上げるだけだ。
「――――ダメですよぅ♡ ふぅっ♡」
――っ!!??
「おわっ!」
びっくりした。
ふうっと、結菜が吹いて風が耳を撫でたのか。
驚いてビクッとした拍子にチンコは一瞬マンコに触れたけど、その隙に結菜は俺の膝の上に腰を落としてしまった。
「治ってから、ってゆったじゃないですかぁ♡」
俺は、膝を開いて結菜のマンコに左手を伸ばす。
「ダメです♡」
そんなことしたって、絆されないですよ? とでも言いたそうな顔。
蕩けた顔で、かつ困った顔で、ちょっと怒ってる。
結菜は何度イかせても、挿入を許さない。
どんな状態でも、こういうふうに頑固なのはむしろ好感が持てる。
こんなにドロドロになっても、まだまだしっかり俺を見てるらしい。
雰囲気に自ら流されているのをしっかり理解して、なおかつ自分を見失っていない。
結菜が他人には流されないと、信じられる。それは嬉しいのに、今くらい流されておけよと都合の良いことを考えてしまう。
「俺が挿入れろって言ってるのに?」
結菜は眉毛をハの字にして、唇を尖らせて、拗ねるように言う。
「ダメなの♡ ……だから早く治してよぉ♡」
ボクも晴彦さんが欲しいのに。そしてまた、結菜は可愛く怒るから、指で弄くる。
「あっ、あんっ♡ そうっ、やって。ごまかすんですねっ♡」
「悪いか?」
「大好きです♡ ――ふゃあっっ♡」
結局、腰が砕けて自分で引き抜けなくなるまでイかせ続けた。
そのあとは脚の間に結菜を落として、髪の毛を掴んでフェラさせる。
結菜は嬉しそうに「動けないんです♡」なんて言うから強引に、髪の毛を掴んだまま前後に動かして、口の中に出した。
結菜のフトモモに刺激され続けて焦らされたからか、尋常じゃない量を口の奥にぶちまけたが、一物が口に入ったままの状態ですべて飲ませる。
最近、結菜に鍛えられたからか、一回イッたくらいじゃ萎えなくなった。
けど、明日も結菜を堪能したいから、続けてもう一回精子を飲ませて止める。
「明日もグチャグチャにしてやるから覚悟しておけよ?」
そう言うと、結菜は至福を顔に浮かべて蕩けた。
「はぁいっ♡」
……。
まあ、こんな様子の結菜を一人でなんて帰せないし、パジャマのズボンは汚れてしまったから、ジャージに着替えて結菜を送っていくことにした。
大丈夫ですなんて、フラフラと千鳥足だから、ギプスを巻いた俺の方がまだしっかりした足取りじゃないかと、むくれて抱き着く結菜を抱き着かせたまま、ゆっくり結菜の家に送った。
「やっちまった。」
完全にやっちまった。
JKが興味本位で近づくのをさせたいようにさせておくなんて言い訳ができない程度には、結菜に手を出しちまった。
あーあ。
あーあー。
もういいや。なるようになりやがれ。
JKが相手してくれるなら裏切られる程度じゃ差し引きプラスのままだろ。
それまでせいぜい結菜をじっくりと仕込んで躾けて、戻れないように改造しちまえよ。
それでお相子だ。
*** ***
*** ***
「誰、、、だ?」
朝、結菜のおっぱいを堪能して、今夜も楽しませてもらうと言って、そして朝飯を食べて、意外に空いていた電車という幸運を経て会社に着いたら、知らない女子社員が俺の向かいの空きデスクに座っていた。
首を傾げつつ、とりあえず俺のデスクに荷物を置いて、聞く。
「えっと、雑務課に何か頼み事でしょうか、ね?」
ボブカットの若いその子は、俺を一瞬見つめて、そして口を開く。
「はいっ。今日からこの企画部第4課に配属が決まりました、山……下 宮子です。よろしくお願いします、望月係長っ。」
自分の名前でつっかえて、ネームプレートを下げてるわけじゃない、社員の多い我が社の一係長の名前を流暢に口にする、その子。
どう考えても怪しいと、朝から俺は冴えていた。
「お、もう来てるんだ。」
寺田課長もやってくる。
当然訳知り顔の課長に、なぜ先週教えてくれなかったのかと、抗議の視線を投げかけると、小さな声で「土曜日に電話が来てね。」と言い訳をする。
「えーっと、山……、」
「山下です。」
「そうそう、山下 宮子さんだったね。今日からこの雑務課で頑張ってもらうことになったんだ。」
おい、それで説明終了じゃないよな?
「急に決まったから、まだまだどうするか決まってないけど、まあ、望月君。よろしく頼めない?」
課長は顔を近づけて「ホントは山崎さんなんだけど。」と意味ありげなことを言う。
偽名かよ!? というか、山崎。近く帰ってくると噂の支社長の苗字じゃねえか!
俺は当然小さな声で課長に抗議する。
「支社長の娘さんがなんでこんなところに? というか俺じゃ荷が重いですよ。」
「これはね、課長からの業務命令だよ。」
お、横暴だ。
~to be continued~